コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第16号
自然体験は自然災害への大切な備え
白井健 (NPO法人千葉自然学校)
2020.7.28
月今年も自然災害が、全国各地で起こっています。被害に遭われた方々には、心よりお見舞い申し上げます。ニュースやSNSなどで現地の様子を見るたびに胸が痛くなります。1日も早い復旧を望むばかりです。 私の住む千葉県南房総市でも、昨年9月に台風が直撃し、甚大な被害をもたらしました。ここ数年の日本各地での自然災害の発生頻度を見ると、いつどこで、自然災害に遭うかわからなくなってきています。
自然災害発生状況下では、停電、断水、携帯電話の電波の不通など、ライフラインが完全にダウンしてしまいます。自分の頭と体だけで、目の前の困難に立ち向かわなければならない環境に放り出されるわけです。 ここで、キャンプ、アウトドアといった自然の中での活動について考えてみます。 海、川、山といった自然の中では、人間の力が及ばない自然の偉大さを感じ、自然に合わせて生活を適応させなければならないことに気づかされます。また、自分の身を自分で守る力、日々変化する状況への対応力が養われます。 テントを張って生活することは、風雨を凌ぐ生活スペースを自分達で作ることができるということです。そして、より快適に過ごせるように工夫することで、基本的なアウトドアスキルを身に付けることができます。 野外炊飯では、火を起こす役割、調理する役割など同時並行でいくつかの作業を分担しなければ、効率的に食事を作ることができません。チームで話し合い、段取りを確認し、安全に気をつけながら進めていく必要があります。不便な環境の中で、より快適に過ごせる工夫や、他者と協力する力が求められるのです。
こういった自然の中での活動は、自然災害発生状況下と似ている部分があります。 自然災害発生時は、しばらくライフラインが止まっている中での生活を強いられます。避難所が開設されれば、避難者と協力しながら生活しなければなりません。そういった困難に前向きに向き合い、乗り越えていく経験を、自然体験を通して提供できるのではないかと思います。
現在、新型コロナウィルスの影響で、外出や人との接触が制限されている状況が続き、キャンプや自然の中での活動が実施しにくくなっています。しかし、この先発生するであろう自然災害のことを考えると、子どもも大人も、自然の中に身を置く機会を作ることで、突然やってくる自然災害への心の余裕を持つことができるのだと思います。
このコロナ禍では、日々刻々と状況が変化していきます。活動に参加する方の不安を取り除くために、感染症の予防対策をしっかり講じた上で、いかにして自然の中に人々を連れ出すことができるかが重要になってきます。自然体験活動指導者としての力量が試される時なのです。
白井健