コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第12号
一言芳恩(いちごんほうおん)
原田順一(NPO法人湘南自然学校)
2020.6.28
【意味】ひと声かけてもらったことを忘れずに、感謝すること。また、その人を主人と仰ぐこと。
みなさんは、「ある一言に救われた」、「あの人の言葉に助けられた」など今でも忘れられない言葉はありますか?そして、今でも感謝して、その言葉に励まされたり、その人のことを思い出して頑張れる…なんてこともあるのではないでしょうか。
私も、そういった自分を励ますような言葉や、奮い立たせるような言葉を自分の糧にして、感謝の気持ちは忘れたことはありません。
こういった言葉の多くは、迷ったり悩んだ時、なにか壁にぶつかったりした時、人生の岐路に立っている時に本当に親身になって考えてくれた人が、周りにいたのではないでしょうか。しかも、ちょっとした一言の方が、心に響き、気持ちを助けてくれることが多い気がします。
思い返せば、私も20代の頃、手を握られながら言われた、「この業界でやっていきたいんだろう」という一言で今の仕事に就く覚悟を決めました。30代の時に支えてくれた仲間の一言、そして今も、身近でいつも親身に答えてくれる方々の言葉に、いつも助けられている気がします。だからこそ、感謝を忘れずに、頑張ろうと思うわけです。
さて、このコロナウイルスのせいで、自粛生活が長く続きました。今まで味わったことのない、長い自粛生活は、子どもにも大人にもストレスがかかり、心身ともに疲れている人も多いのではないでしょうか。
そんな中、テレワークや大学生のオンライン授業がだいぶ浸透しました。でも、少し心配なことがあります。画面を通して会話することは便利ではあるのですが、慣れてしまうと、細かい表情や仕草などを感じにくい気がすることです。本当は悩みがあったんだけれど、上手く言えなかったり、こちら側が察してあげることができなかったりするのではないでしょうか。やはり、物理的な距離の問題なのでしょうか。対面ばかりだった今までが、オンラインだらけになると、少し寂しいですよね。もしかすると、仕事を辞めてしまう人が多くなるかもしれませんね。その時に、近くで一言声をかけてくれる人がいれば、また違った答えになるのかもしれません。
と、こう書くと、なんだかオンラインのことを不要と書いているようですが、そうではありません。その対面の時の良さを理解して、オンラインの時も変わらず、相手のことを考えて親身になれば、声をかけることはできるはずです。握手はできませんが、心に残る一言で、迷ったり悩んだりしている人を助けられるかもしれません。誰かが誰かを助けることができれば、アフターコロナに向けて心の支えができるはずです。
オンラインがここまで浸透した今、何気ない一言を、今までよりももう少し意識してみてはいかがでしょうか。きっといつか、「あの時の」となる日が来るかもしれません。
原田順一