コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第74号
冒険手帳のすゝめ
小澤 潤平(NPO法人国際自然大学校)
2021.10.13
私には2人の子どもがいます。小学校3年生の男の子と、小学校1年生の女の子です。
妻は保育士なので、我が家は教育者家系?となるのでしょうか。
第一子が生まれるときには、「幼児期は妻で、青年期までが僕。だから大丈夫!」と変な自信があったのを覚えています。
普段お互いが子どもと関わる仕事をしているので、そこでの経験を育児に活かせるのではないか?と考えていました。
いざ、子どもが生まれてみると、保育士での経験や、キャンプ指導者としての経験は、一部は活かすことができましたが、仕事とは全く違うものでした。
活かすことができた一部が「自然体験」です。子ども達を「自然に触れさせたい」と思う気持ちは、他の親よりも強いものがあったので、乳児の頃から自然に触れる機会は多かったです。「自然に触れる」というハードルが下がったのは、やはりキャンプを仕事にしていることが起因していたのだと思います。
そして、子ども達が成長して、小学生になった今、自分のスキルを使って子ども達に何ができるかと考えるようになりました。その一つが、「冒険手帳」です。書籍で販売されている本ではなく、息子と作ろうと話しているこれからの冒険のスケジュールノートの仮称です。
たとえば、
・家から6キロ歩く。
・往復3時間の登山をする。
・自転車で遠方まで行く。
・夜の公園に探検に行く。
・MYスキレットでステーキを焼く。
・親戚の家にお泊りに行く。
・一人で電車に乗ってみる。
・カッターを使ってクラフトをする。
などなど。
これらは、実際に息子が小学生になってから、一緒になってチャレンジしたことです。
何が言いたいかというと、子どもに通過儀礼(イニシエーション)を作ることを大切にしては、ということです。
子ども達が大人になるまでの間に、何を体験させたいかと考えた時に、前述したようなことをブレイクダウンして考えました。
私が考えた、子ども達が大人になるまでに体験させたいこととして、(かなり偏りがあります!笑)
・100キロ歩く。
・高い山(3000m級の山)に登る。
・海から山の頂(Sea to Summit)まで行く。
・夜通し何かをする。
・自炊する。
・一人暮らしする。(おすすめは寮暮らし)
・青春18切符で旅行する。
・ナイフを使う。
などなどなど。
もっといっぱいあります。本当は、「自分が若い時に体験したかったな」ということもあります。海外旅行や、恋愛、友達といく旅行など。海にも川にも山にも雪山にも、考えればもっとたくさんあります。私は親として、子ども達にいろいろな経験をしてほしいと、願っています。
これは、多くの親も同じではないでしょうか?
もしかしたら、芸術的な体験をしてほしい、文化的な体験をしてほしい、宗教的な活動をしてほしい、奉仕活動をしてほしい、親や家庭のバックボーンによってさまざまだと思います。勉強することや、部活動やスポーツを一生懸命することも大切ですが、その土壌となる「体験」は子ども達の学びの上でなくてはならないと思います。
そういった意味では、前回のカシオペイアにもあった、パーソナルアウトドアインストラクターについて可能性があると感じています。例えば、「13歳までにやっておくべき50の冒険」(太郎次郎社エディタス )という本があります。子どものうちにすべき冒険的なことがまとめられています。
こういったことはおそらく子ども達だけではなかなか経験はできませんし、保護者もなかなか体験させる勇気もでないでしょう。
しかしながら、キャンプを生業にしている我々のようなアウトドアインストラクターは、おそらくこの期待に応えられます。個人を対象にするような質の高さが求められる仕事になると、しっかりと単価を上げなくてはいけないので、実施できるエリアや客層は限られてきますが、可能性はあると感じます。
「冒険的なことで、子どもの頃にしかできないことがわからない」というような親がいたなら、本や指導者に頼るのもよいのではないかと思います。
その時に、大切にしたいことは、「冒険的」であってほしいという願いです。
ワクワク、ドキドキ、そんな気持ちになりながら、冒険をしてほしいのです。やらされているものではなく、子どもと一緒に何をやってみたいか、どんなことをしてみたいか、考えることが子どものモチベーションににもつながります。崖を登ったりするようなタフなことだけではなく、「今までやってないことに挑戦する」ことを大切にして、通過儀礼を一緒に考えてはどうでしょうか。
可愛い子には旅をさせよ。
そんな言葉がありますが、小学生になった今。たくさん旅をしてほしいと願っています。親としての願いもありますが、指導者としても同様な思いでいます。日本中の子ども達がもしこのような体験をしていたら、「良質な体験をした子ども達」と呼べるのではないでしょうか?
皆さんは、自分の子どもや、近くにいる子ども達に、どんな体験をしてほしいですか?
そんな思いがあれば、是非「冒険手帳」を子ども達と一緒に作ってみてください。
世界に一つだけの、冒険手帳が出来上がるはずです。
小澤潤平