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コラム『カシオペイア』(アーカイブ)

コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第75号
家族で過ごすキャンプ その2
桜井 義維英

2021.10.20

先々回、家族でのキャンプにパーソナルインストラクターが付くのはいかがですか?というお話をしました。
そして、先回は小澤君の子どもと冒険手帳を作ろうというお話でした。
これは期せずしてなのですが…
この冒険手帳は、子どもの成長に合わせて、年齢の通過儀礼(イニシエーション)として体験していこうというものでした。

今日は、この通過儀礼をキャンプの中でしましょうというお話です。

例えば、誕生日です。
キャンプ場や、先ごろお話ししたパーソナルインストラクターに依頼して、キャンプで、お子さんの誕生祝いをするのです。
誕生日の前の週末などがいいでしょう。
キャンプに行くと、宝の地図が置かれているのです。
ロールプレイングゲームのように、地図に沿って、いくつかの冒険をしていくと、最後に宝が手に入ります。
当然それは、誕生日プレゼントです。
そして、キャンプ場に帰ると、誕生日を祝う飾りつけとケーキが待っている…という趣向はいかがでしょう。

大人として認める記念日としては、
小学校6年生の最後の春休みとか、15歳の誕生日でもいいでしょう。
お父さんがお子さんを「これで一人前」と認めたときに、キャンプで、今までお父さんが使っていたナイフを、お子さんに譲るというのはいかがでしょう。
そのためには、長い年月、お父さんとお子さんが一緒にキャンプをしてきて、お父さんがナイフを使う姿を、お子さんがしっかり見ているということが必要です。
お父さんのナイフを譲るのがもったいないようなら、お子さんのために1本新調してもいいでしょう。
名入れをしてあげるのもいいでしょう。
ナイフというのは、危険なものでもあるし、大変役に立つものでもある。そのようなこともきちんと説明して、ひとつの儀式としてナイフを渡してあげるのです。
小ぶりの包丁でもいいでしょう。

次は成人式です。
現在は、行政が主催する行事が主で、晴れ着を着て、お酒を飲んで、ニュースに出るような騒ぎを起こして…というような印象があります。
以前、成人式に出ないで、成人の日には、ビバークをしようとお話ししたことがあります。
今考えると、ずいぶん過激なことを言ったものだと思います。ですが、ひとつの節目をバカ騒ぎで終えるのではなく、自分の人生を振り返る時間にするというのは、間違いではないように思います。
そう考えると、自然学校やキャンプ場が、今までの参加者や利用者のデータをきちんと管理しておいて、その子が成人するときに『自然学校でこんな成人式をします』とか、『キャンプ場でこんな成人式をします』という案内をしてもいいのではないでしょうか。
私が指導したビバークで、実際に成人年齢の子が参加してくれたこともありました。
今、どうしてその時に記念になるような、ナイフとか、万年筆とかをプレゼントしなかったのだろうと後悔しています。
そして今ならば、その成人式の事業を、例えば、ビバークというものにしたとします。
2泊3日、山の中で、ひとりで過ごすのです。
当然、今までお世話になった人のことなども考えるでしょう。
そして、サプライズとして、親御さんに2日目の夜からそっとお越しいただき、お子さんたちのために、帰還したときの食事を用意してもらうのです。
そして、帰還の時、それぞれのビバークポイントへの迎えは、親御さんに行ってもらうのです。
きっと、私たちが迎えに行くより、ずっと感動的なものになるのではないでしょうか。
そして帰還してきたならば、全体での振り返りは簡単に済ませ、食事は家族ごとに取りながら、ゆっくりと時間を過ごしてもらいます。
親御さんには、その時にどんな風に過ごすかということのコツも伝授しておきます。
できれば、家族ごとに占有スペースが作れるといいですね。
そして、親御さんから成人の記念の品物をプレゼントするといいのではないでしょうか。
もちろん、親御さんに選んで買ってきていただくのもいいでしょうし、こちらで準備してもいいでしょう。
何故こちらで準備することも提案するかというと、一緒にその時を過ごした仲間と同じものを持つというのは、ひとつ、くじけそうになった時、その品物から仲間を思い出し、踏ん張れると思うからです。
そこに親御さんからのメッセージを刻印するのもいいでしょう。

そんなことができれば、とても記憶に残る成人式になるのではないでしょうか。

今日本は、毎日がお祭りのようになっていて、節目のない成長をしているように思います。
節目のない成長は、いつまでも子どもでいたいというような大人を育てることになるように思えてなりません。
普段は、ごくごく質素な生活をしつつ、節目の時には、きちんと節目となることをしてあげるというのが大切なのではないでしょうか。
日本は、その節目が商業主義に飲み込まれている感があります。
ただ晴れ着を着て、写真を撮ってというだけではなく、そこにある意味を理解し、その時に与えなくてはいけない事や物、そして意識を、きちんと子どもに与えてあげることを考えていただきたいと思います。
しかし、その儀式そのものがもう失われている感もあります。
そこで、節目を作る活動を、自然学校やキャンプ場が再構築するというのはとても意味のあることだと思っています。
20周年を迎える団体などは、団体の成人式と、参加者の成人式を一緒に開催してはいかがでしょう。

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