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コラム『カシオペイア』(アーカイブ)

コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第96号
地域の自然学校と全国の連携
桜井 義維英

2022.3.23

まず始めにお断りしておきたいと思います。
地域の「自然学校」と題しましたが、そのままの自然学校をさすのではなく、自然の中で、体験活動を行う団体の総称だと思ってください。
自然学校という名称を使っていなくても、そのような体験活動を行っている団体は、先号でも書いた通り、日本中に相当数あると思われます。
そのような団体は、地域でとても良い活動をしています。
地域の大切な役割を果たしている団体もあります。
その団体があることで、学校の生徒数が確保され、廃校を免れた例もあるでしょう。
新しい地場産業が生まれた例もあるでしょう。
交流人口が増えた例もあるでしょう。
もちろん、地域の人口が少しでも増えることは間違いないでしょう。
自然体験を提供することによって、副次的に色々と地域に良い効果が出ているのです。
これが、地域において体験活動を提供している団体の成果なのです。
もちろん、主目的である子どもたちを対象にした体験活動をしていれば、その子どもたちに良い効果が出ていることは間違いないでしょう。
しかし、その効果以上に副次的効果が大きいのではないでしょうか。

その活動は、各地の話を聞けば聞くほど、その地域の実情を踏まえて、その地域だからこそできることであると感じます。
その地域でないとできないことと、言ってもいいかもしれません。
ですから、全国で同じような展開ができるかと言ったら、それは難しいのです。


今までは、文部科学省とか農林水産省が「こんな成功事例がありますから、全国各地で同じように展開しましょう」と予算をつけ、拡大しようとしてきました。
しかし、それは、なかなかうまくいかないことが多かったのではないのではないでしょうか。


戦後、日本全体が焼け野原となり、みんなで日本を復興しようというときには、そのような方法でも良かったのかもしれません。
しかしおわかりの通り、現在の東京と地方の生活様式は、同じ国とは思えないほど違っています。
また、それぞれの地域でも、そのありようは全く違います。
食文化も気候も違えば、当然生活様式だって違うのです。
戦後77年を経た今、このように日本の発展は、地域によって多種多様になっています。
ですから、各地域での活動も、地域ごとに多種多様になるべきなのです。
そのような基本的な社会の変化を、まず皆さんと共通理解しておきたいと思います。
そのうえで、地域での活動をそれぞれが頑張っていただきたいと思います。


しかし、地域で頑張るにあたって、地域の特性が重要であると同時に、より独創的な活動を展開するには、色々な事例を知ることも大切です。
今までは、そのために全国大会などが開催され、成功事例、好事例などを紹介していました。
しかし、色々な事例を知るという点では、その情報源が少なすぎると思うのです。
コロナ禍で、私たちはオンラインという新しいツールを手に入れました。
このツールは、気軽にできるというのがひとつの特徴です。
そして、全国どこからでも参加できるということがもうひとつの大きな特徴です。
そこで考えられるのは、オンラインを使って、頻繁に皆さんが集い、お互いの事例を紹介したり、相談するような仕組みを作ることができたらいいのではないでしょうか。


しかし、そうなると、中央の政府や行政の役割はどうなるのでしょうか。
各地域で頑張っている団体をどのように支援すればいいのでしょうか。中央にいる人たちからは、各地域の活動は見えません。


そこで私たちは、地域での活動をいかに中央に見てもらえるかを考えなくてはいけません。
今までは、何かのきっかけで中央との関係を持てた団体が、モデル事業などを引き受け、成功事例として事業を行い、それを全国に広めようという仕組みでした。
しかし、これからは、地域でコツコツと頑張っている団体に光を当てることができたらと思うのです。
とはいえ、ひとつひとつの団体を中央に届けるのは不可能です。
ですから、大きな塊として、中央に認識してもらえたらいいなと思っています。
それが、いつも申し上げているサーディンランです。


しかし、今までのような情報を共有するだけのネットワークではいけません。


各団体同士が課題を共有し、その課題に対して、いかにアプローチするかを日々議論していくのです。
その結果、自分の団体が何をしなくてはいけないかを認識し、かつ、団体同士が協力してしなくてはいけないことが何かも認識することができます。


ですから、サーディンランとして大きな塊となり、中央に働きかける時は、皆が自然と行動を起こしていける、そんな集まりになっているといいと思うのです。

そして、この大きな連携を作るためには、各地域に核となり、地域と連携する人材が必要であると考えています。
その人材を一人でも多く見つけ、連携することが、走林社中でできればと考えています。
皆さま、来年度も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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