日本を、支える人材、けん引する人材、を育てる

コラム『カシオペイア』(アーカイブ)

コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第87号
自然体験における商品は人材
桜井 義維英

2022.1.19

私たちは自然体験活動を仕事として、子どもたちに提供しています。
お金をいただいて、体験を提供しているわけですね。


さてそこで、考えたいのですが、お金をいただいた代わりに、お渡しするものは何なのでしょうか?
もちろん、体験ですね。
では、体験はどのような要素で構成されているのでしょうか?
わかりやすくするために、例をお示ししましょう。
この時期ですから、スキーキャンプを考えてみましょう。
スキーキャンプという体験の要素は…
まず、スキー場…これは環境ですね。
それから、プログラム…これは活動です。
スキーだけではなくて、夜にキャンプファイヤーをしたりとかもあるでしょう。
そして最後は、指導…これは人材なのです。


環境もプログラムも、どの団体も同様なものになりますね。
しかし、最後の人材は、団体独自になるのではないでしょうか。
団体独自というよりも、その都度、一期一会になるのでしょうね。
そして、お金を頂戴するのに、この3つが融合して作り上げられる「体験」という商品にお金をいただくわけですね。


環境は、基本的には選択することしかできませんね。
プログラムは、既存の物の組み合わせが主流になりますが、新しく開発することも大切になります。
そして、最後の人材は、それぞれの団体がしっかりと作り上げる必要がある部分になるでしょう。


数多くある団体の特徴を出すことができるのは、実は、この人材ではないでしょうか。
すなわち、私たちが「商品」としている体験に、最も団体の特徴を出すことができるのは人材で、自然体験という「商品」は、実はそれを支える人材こそが「商品」であると思うのです。
そこで、この人材を育てることを考えてみたいと思います。


まず、キャンプにおける指導者は、リーダーではなくキャンプカウンセラーと呼ばれます。
このカウンセラーというのは、助言者とか、相談を受ける者を指しますが、一般には心理カウンセラーをさしますね。
そして、キャンプにおけるキャンプカウンセラーはどういう意味があるのでしょうか。


私が、バイブルとしている「キャンプカウンセリング」という本の、よいカウンセラーの条件という項に次のようなものがあります。
(1)人間が好きであること
(2)自然が好きであること
(3)模範を示せること
(4)心は若く、判断は分別をもって行えること
(5)キャンプに必要な技術を持っていること
(6)忍耐強いこと
これを見ると、決して心理カウンセラーのようなことをするのではないことがわかります。
そして、そこには、子どもたちの心を開かせ、キャンプカウンセラーに何でも相談できるような関係を望んでいることがわかります。
そのためには、キャンプカウンセラーは、子どもたちにとって、憧れられる存在であり、社会的に模範的人材であることが望まれています。
そして、キャンプ技術も持っている。
そのような人材を養成しなくてはいけないということです。


この考え方は、教育・組織キャンプにおける指導者の在り方だと思います。
そこまで、ストイックに考える必要はないだろうと言われる
かもしれません。
しかし、今、キャンプだけでなく、子どもの面倒を見る人材に、とても高い倫理観が求められているのではないでしょうか。
正直、現在のキャンプ指導者の養成カリキュラムを見てみると、多くは、キャンプ技術や、自然の知識などを習得することが中心のように思います。


それはもちろん必要ではありますが、憧れられる存在となるため、社会的に模範的人材になるためには、どのようにすればいいのでしょうか。
そのような人材というのは、実は、キャンプのみならず、社会においての指導者にとっても言えることなのではないでしょうか。


憧れられるとは、時には、‘危うい感じ’があります。ちょっと不良っぽいというか、人と違うことをして目立つとか…しかし、私たちは、そうではなく、人が好きで、自然が好きで、分別を持った判断をしていることで、子どもたちの信頼を得なくてはいけないのでしょう。


そして、社会的に模範的であるということは、社会のルールに沿っているということでしょう。
社会のルールとは…妄信するのではなく、いつも自問自答しつつ、何が正しく、何が正しくないかを見極める必要があるでしょう。
そして、キャンプ内でその合意をもって活動がなされることが大切なのでしょう。
当然、そのようなことを子どもたちに伝える力も必要です。
それは、自らの行動をもって伝えることももちろんですが、言葉で伝えることも必要なのです。
そのような人材を育てるにはどうしたらよいか、次回にもう少しお話していきましょう。

コメント

コメントはまだ投稿されていません

コメントを投稿する