コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第8号
これからは地域内での体験を考えましょう
白井 健(NPO法人千葉自然学校)
2020.5.28
私は千葉県南房総市に住んでいます。自分で食べる米は自分で作ろうと決め、田植えから稲刈り・脱穀まで行うようになって今年で4年目となりました。自然と向き合うことは手がかかり、大変なこともありますが、自分の手で作ったお米を食べられる喜びは何にも代えがたいです。それができる自然環境が地方の良いところです。
しかし地方の暮らしは、移動に車が必要だったり、統廃合が進み学校が少なかったり、近くのスーパーへ行くにも時間がかかったり、不便な面もあります。
都市の暮らしはどうでしょう。たくさんの人、物、情報が集積し、とても便利です。お店や交通網も整備され、お金を払えば必要な物が手に入ります。快適な生活を送ることができると思います。
一見すると、自然との距離が遠いのは、都市の暮らしです。しかし、地方の子どもでも自然の中で遊んだ経験の少ない子どもが多いという結果が、とあるアンケートでは報告されています。つまり、地方も都市も関係なく、自然と触れ合う機会が減少しているのです。
そんな中、新型コロナウィルスの影響で、なかなか遠くへはいけない状況になりました。これは見方を変えると、もう一度身近な環境に目を向けるチャンスと言えます。
私はこれまで、休みが取れると県外へ旅行したりしていました。しかし、最近は子どもと近くの道を自転車で巡ったりしています。自転車に乗ったのは数年ぶりでしたが、見たことのない花が咲いているのをみつけたり、黒く熟れたクワの実を見つけて食べてみたり、車では見過ごしてしまっていた小さな発見がありました。
身近な自然にいかに目を向けてもらえるか、非日常な体験よりも日常の中に自然と触れ合う機会をいかに作れるかが、これからの自然体験活動指導者に求められていると思います。それは地方も都市も、場所を選ばず必要になってくるのだと思います。
これまでは、都市の子どもたちが地方へ行って自然体験をするというモデルが多かったかと思います。しかし、これからしばらくは、自分たちが拠点とする地域の子どもたちに、地域内で体験を提供するプログラム展開が必要です。そのためには、地域で活動する人や団体と連携し、地域の魅力を再発見することが必要だと思います。これを機に今一度、自分の地域を見つめ直してはいかがでしょうか。
白井 健