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コラム『カシオペイア』(アーカイブ)

コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第53号
子どものよい生活習慣
桜井 義維英

2021.5.5

子どもたちの良い生活習慣というのは、どのような習慣なのでしょうか?
ある大企業の事業所長さんに言われたことがあります。
その事業所だけでも、毎年200人からの高校卒業の若者を採用しています。その若者たちの8割が、まず朝の挨拶ができないというのです。
所長さんは「挨拶はコミュニケーションの基礎だ」とおっしゃっていました。
もうひとつ、ある教育委員会とPTAが共催する講演会で、お話をする機会がありました。
500人ほどの保護者の方々が集まっていました。そこで私は「お子さんと、朝、『おはよう』と挨拶をしていますか?」と聞きました。
すると、約8割がしていると手を挙げたのです。
片や、8割は挨拶ができない。
片や、8割は挨拶しているという。この食い違いは何なのでしょう。
求めているものが違うのですね。
事業所では、きちんと相手の目を見て、「おはようございます」と、言葉を声に出さなくてはいけません。
しかし家庭では、お母さんが、「おはよう」というと、「うん」とか、「ああ」とか答えても朝の挨拶をしたことになっているのではないでしょうか。それも、お母さんは台所に向かったまま、背中で挨拶をしていることが多いのかもしれません。
お父さんは新聞を読みながらとか、スマホを見ながらとかかもしれません。
しかし、これでも、家庭では挨拶をしたことになってしまうのです。
さて、このギャップを埋めるにはどうしたらいいのでしょう。
社会の常識と、家庭の常識のギャップを埋めるのは、私たちが行うキャンプなのではないでしょうか。
生活を伴う活動だからこそ、子どもたちの行動変容を起こすことができる可能性があるのではないでしょうか。
しかし、年に一度キャンプに参加するだけでは、その行動変容の効果は持続せず、元の木阿弥になってしまいます。
ですから、子どもたちへの良い行動変容を促し、かつ持続させるためには、頻繁にキャンプをする必要があると考えました。
それが、月に一度実施する子供体験教室です。
1年ではなく、1ヶ月のインターバルなら、効果が薄れる前に次のキャンプ(活動)が来て、また効果を上げることができるのです。その積み重ねで、よい生活習慣が身につくと考えたのです。
そして、もうひとつ考えたことがあります。
私たちが、子どもたちにどのような生活習慣をつけてもらおうと指導しているかを、保護者の方にも理解していただくために、カウンセリングノートというものを、キャンプカウンセラーから毎回お届けするという仕組みを作ったのです。
キャンプで促した生活習慣を、家庭でも続けてもらえれば、そのよい生活習慣が薄れる度合いは少なくて済むと思ったのです。
そして、我々が良いと思って子どもたちに促す生活習慣が、家庭に受け入れてもらえるものなのかどうかの確認にもなると考えました。
そして、一番大切なことは、家庭だけでなく、社会も納得してくれる習慣を提供することができているかどうかということです。
そのために私たちは、自らの生活を通して、その習慣を考えていかなくてはいけません。
そして、その考えを、社会の多くの人たちと話し、了解を得られるかどうかの確認を続けなくてはいけません。
この多くの人たちというのは、教育関係の人ではなく、企業や商店など、異業種の人たちでなくてはいけません。
加えてその検証作業は、「これでいい」と固まってしまってはいけません。なぜなら、社会の常識やルールなどは、時代とともに変化していくからです。
それに伴って、生活習慣も変化していくはずだからです。
その検証のうえで、よい生活習慣を自らの生活に取り込み、自然な姿で子どもたちに体現できるようにしなくてはいけないのではないでしょうか。


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