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コラム『カシオペイア』(アーカイブ)

コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第83号
キャンプのエンディング
原田 順一

2021.12.15

 みなさんは今までのキャンプ活動の中で、どの場面が一番心に残っていますか?ドキドキした初めてのキャンプ、子どもたちと見上げた満点の星空、綺麗な海や川で遊んだこと、真っ白なゲレンデに飛び込んだ瞬間、キャンプファイヤーの残り火で語り合ったこと。もちろんその記憶は人ぞれぞれで、どれも素晴らしいことには間違いはありません。キャンプ最終日に、子どもたちに「楽しかったことは何?」と聞くと、よく最後の方のプログラムを言葉にしますよね「キャンプファイヤー!」とか。あれ?あれだけ入った川遊びや、大変だった野外調理は?とかよく思うものです。これは、直前の思い出がやはり印象深いということだと思います。逆に言うと、楽しかったはずなのに、帰りに嫌なことがあると「楽しくなかった」なんてこともあるわけです。
 では、みなさんはこんなキャンプの終わり方が好きだという「キャンプのエンディング」はありますか?泣いたり、笑ったり、色々なエンディング(終わり方)がありますよね。解散の時なんてバタバタして、それどころではない。なんてことももちろんあります。バスが大渋滞で大幅に遅れて到着、疲れ果ててバスから降りてきて「大変でしたね~」なんて事を言いながら解散。そんなこともあったりします。
かくいう私も、好きなキャンプのエンディングがあります。それは、島のキャンプのエンディングです。島でのキャンプですから、船に乗って帰ってくるわけです。渋滞なんてもちろんありませんし、よっぽどのことが無い限り到着も遅れはしません。万が一遅れたとしても、波の状況なので、バスのように、止まったり動いたりとストレスはあまりありません。では、なぜ好きかというと、それは「しみじみと終わりを感じることが出来る」これに尽きます。分かりやすく言うと、出航時間と到着時間が決まっているので、タイムリミットが読めるわけです。渋滞などのイレギュラーがないので、突然のお別れが少ないわけです。更に、綺麗な海で遊んだ後、東京湾に入り周りにはビルが見えてきて、海の水が濁ってくると「あぁ~帰ってきたんだ・・・」と視覚に訴えられるわけです。即ち、景色と空気の変化をゆっくりと感じ考えることが出来るのです。少なからず、景色が山からビルになっても、その変化は感じることは出来るのですが、窓越しに見る景色よりも、海風を浴びながら感じるあの感覚は島のキャンプ特有なことだと思います。船が着岸するころになると、お家の人はいるかな~と子どもたちはドキドキ。親御さんたちも今か今かと下船口でわが子を待つわけです。船のタラップを歩いて、姿を現すころには大勢の親御さんがカメラを向けて手を振ってお出迎えをしてくれます。子どもたちも照れくさそうに手を振って返事をしています。この瞬間、少し前に始まった名残惜しくて長いエンディングが「帰ってきた!」という現実と共に、フィナーレを迎えるというわけです。
少し話を戻しますが、子どもたちに海水の色の違いを見せると、本当にがっかりした感じになります。その変化を、どうしたらあの綺麗な海は残せるのかね?と聞き、子どもたちの心に最後に問いかけます。それはもちろん、最後に印象に残ってほしいから。と繋がるわけです。
 毎年のように島のキャンプを担当しているのですが、ある時、リピーターの子どもが島に到着するなりこう言いました「ただいま」。心の「ふるさと」になっているのですね。もしかすると、エンディングは次のキャンプのプロローグになっているのかもしれません。
NPO法人湘南自然学校
原田順一

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