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コラム『カシオペイア』(アーカイブ)

コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第70号
DIYなキャンプ
桜井 義維英

2021.9.8

 キャンプを活動と生活に分けて考えると、この40年は活動に重点を置いて展開してきたと思います。私たちが国際自然大学校を立ち上げた当時は、生活にかなりの時間を費やすキャンプが多かったです。
朝ご飯を作って、片付けをしたら、ほどなくしてお昼ごはんを作る。さもなくば、朝食べたご飯の残りでおにぎりを作って、それを持って山のぼりに行きました。それでも、午後は早めに降りてくる山登りでないと、夕食づくりが真っ暗になってしまい、大変な苦労をすることになる…といった感じでした。
 テントを張れば、テントの周りに溝を掘らないと、雨水がテントの中に入ってきてしまう。時として、トイレも自分たちで掘って作りました。もちろん、周りの囲いも作りました。
キャンプで快適に暮らし、ちゃんと食事をとるために、大変な時間を費やしたわけです。
 
 しかし、もっと活動に時間を費やそうと、お昼はお弁当を取り寄せもいいではないかとか、登山で使うドームテントを導入しようとか、改革をしてきました。そして今は、プログラムを十分に満喫できるキャンプが隆盛を極めています。
 
 40年前は、家庭生活の中で、子どもたちがいくつかの役割を担っていました。
ですから、そんな生活から解き放って、色々な活動をさせたいと考えたのです。
しかし今、家庭生活の中で、子どもたちが担うべき役割がほとんどなくなってしまったのではないでしょうか。
そんな現代では、キャンプはもう少し生活に重きを置いた展開をしてもいいのかもしれません。
 ただし、私たちが体験してきた40年前の原始的キャンプをしろというのではありません。現代に沿って、生活に重きを置き、生活の中の役割を分担し、かつ、キャンプ生活を快適にしていくような活動をしてはどうでしょう。
今風に言えば、「DIYなキャンプ」です。
 
 まずテントです。
布製のテントではなく、板や柱を使って、組み立てキットのような家を作れないものでしょうか。以前、『はせまん』という会社と組んで、いいところまで行ったのですが、現在は自然消滅という感じです。



 そして、キッチンやダイニングです。
これは、以前は竹を使ってロープワークを駆使して作ったりしていましたが、DIY的に考えれば、ボルトナットや、ラチェットレンチを使って組み立てるような、キットを作ると面白いのではないでしょうか。
 
 そうすると、組み立てテントとともシリーズ化できるかもしれません。
しかし、ここまではキャンプの新しいスタイルにしかなりません。
 キャンプ生活の中で、役割分担をして、自分の居場所を見つけた子どもたちが、家に帰ってからの生活の中に、いかに役割を持つかということが大切です。
そのきっかけになるような、キャンプ生活を考えないといけませんね。
 
 例えば、デッキの上に建てたテントの中や、まわりの掃除をするのに、ほうきを使う。
そして、工作でそのほうきを作って持って帰って、玄関の掃除をするように促すとかはいかがでしょう。
 中津ほうきというのが神奈川県愛川町にあります。愛川少年自然の家のクラフトなどにすればいいのにな~と思っています。
資料:中津ほうきのできるまで
https://youtu.be/amGFpkYEh1s
https://youtu.be/CvuCJlFiGLY
https://youtu.be/CoD5JnwRKRQ
資料:ザメイキングのほうきのできるまで
https://youtu.be/LPp1lVU5M9c
 
 同じように、食事を作った時にご飯をよそうしゃもじなどを自分で作って、ご飯をよそるときはそれを使うようにしてはいかがでしょうか。
もちろん持って帰って、家でもそのしゃもじを使ってよそるようにするのです。
ご飯をよそるのは私の仕事(役割)というのも、よいのではないでしょうか。
これは、木曽の酒井産業さんと研究をしましたが実現はしませんでした。
私の方で需要が見込めなかったからです。
 
 このように、自分で工夫して、自分で手作りしてキャンプを作り上げていくということを経験させてあげましょう。そうすると、家に帰ってから、自分の力で家庭内での生活のためのものを作り上げていくようになるのではないでしょうか。
 
 また、それらの道具を持ち帰ることで、家の中で自分の役割を作り出す、手に入れることができるでしょう。
それは家庭の中で、家族がおのおの役割を分担し、支えあって暮らしていく出発点になるのではないでしょうか。 お金を稼ぎ、それらの役割をお金で解決するのではなく、みんなが協力していくことで解決していくのです。それを生活というのではないでしょうか。
そんな生活を作り上げる、はじめの一歩になるようなキャンプをこれから目指してもいいのではないでしょうか。

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