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コラム『カシオペイア』(アーカイブ)

コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第36号
プログラミング的思考を自然体験で育てる
稲松謙太郎(NPO法人国際自然大学校)

2020.12.28

コロナウイルスに関する影響を調べるのに、「富岳」というスーパーコンピュータが活躍しています。今ではコンピュータを使って調べたりすることは、日常的に当たり前になってきました。

2020年、小学校ではプログラミング教育が始まりました。

プログラミングとは、コンピュータに命令すること。「コンピュータにさせる処理を順番に書き出したもの」をプログラムと言います。例えば、水泳のクロールは「足を交互にバタバタさせて水を蹴りながら、右手を前に出して、後ろに向かって水を掻いたら、次に左手…」といったように、1つ1つの動きを順番に説明することと同じです。

人間は何かをするときに、先を予想して動くことができるのですが、コンピュータにはその力がないので、1つ1つの動きを、正しく命令することが必要なのです。

文部科学省がプログラミング教育の必修化を決めた新学習教育指導要領には「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」とプログラミング的思考を定義づけています。

プログラミングに欠かせないのは、「物事の仕組みを理解する」「順序立てて考える」ことであり、パソコンやタブレット端末を、使いこなすということではないのです。

私は自然体験の中にこそ「プログラミング的思考」があると考えました。

例えば、キャンプでよくやる「火おこし」です。簡単に言うと、燃えやすい燃料と酸素があるところに火種を作り出すことで火はおきます。3つの要素をバランスよく作り出すことで、燃焼が継続します。火をおこすには、紙、割り箸のような枝、親指くらいの太さの枝、手首くらいの太さの枝といった燃料の順番、酸素が入る隙間、火がどのように上がってくるのかなどを順序立て考えて組み、火種から熱を移すことが必要です。またそうして組んでも全てがうまくいくわけではなく、水に濡れたり、風が起きたりといった、コンピュータでいうところのバグが発生して、それらを改善をしないと、火がつかなかったり、ついてもすぐ消えてしまったりといったことも出てきます。

このように火おこしひとつとっても「プログラミング的思考」が多分に盛り込まれており、仕組みを理解して順序立てて考える要素が自然体験の中には、ちりばめられているのです。


また、自然の中で起こっていることの多くが人間の力の及ばないところで発生しているからこそ、自分の意図した一連の活動に近づけていくためには、感覚をフルに活用して感じ、考え、行動していくこと、他人と協働しながら学ぶことが他よりも多くなるのではないかと考えています。

自然体験の中でプログラミング的思考を育てていくことは、人間が自然とともに、よりよく生きていくために、必要な物事の仕組みを考える最高の方法ではないかと思い、これからも研究を続けていこうと思っています。


2020年12月28日記

稲松謙太郎


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