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コラム『カシオペイア』(アーカイブ)

コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第55号
本当の夜
桜井 義維英

2021.5.19

本当の夜というのは、暗いものですよね?
夜は暗い…と皆さんわかっています。
しかし、本当に暗い夜を知っていますか?

今、私たちの暮らしの中で、本当の夜の暗闇に出会うことは、まれになってしまっているように思えます。

ましてや、子どもたちは、夜の暗さを知っているでしょうか?
お父さんやお母さんは、子どもに暗い夜道を歩かせたいとは思っていないでしょう。
そんな現代の子どもたちが、夜の暗さを知らないで育つとどうなるでしょうか?
別に、夜の暗さを知らないで育っても困らないでしょう。
本当にそうでしょうか?

もうひとつ質問をしましょう。
その夜の活動で行うキャンプファイヤーは、なぜするのでしょう?
友達と協力し、スタンツや、合唱を行うことで、仲間の絆をつくる…でしょうか。
でも、それは夜ではなくてもいいですよね。
キャンプファイヤーを囲んでで行うことで、火の力や大切さを知ることができる。…でしょうか。
ならば、野外炊飯でもよいのではないでしょうか?

なぜ夜に、わざわざ大きな火を焚いて、キャンプファイヤーをするのでしょう。
不思議なもので、火を見て話をすると、本音が出たり、落ち着いて話ができたりするものですよね。
そして、強い思い出として残るのも事実です。

少し話題を変えましょう。
夜の闇の向こうには、何があるのでしょうか?
何があるかわからないので、いろいろ想像する。
見えないものが見えてきたりもするものです。
そうすると、そこに妖怪が現れたり、幽霊が現れたりするのでしょうね。
この想像力は、きっと人生を豊かにするのだと思います。
暗闇は、日常の中にある想像する時間なのではないでしょうか。

天井の節穴が人の顔に見えたり、顔に見えたりしたことはありませんか?

同じような時間が他にもあります。
絵本の、ページとページの間です。ページをめくるときのその隙間に、子どもは色々な物語の進行を想像するのではないでしょうか。
同じように、小説など、文章と文章の間で、私たちは物語をありありとした映像として思い浮かべながら、読み進めていくのでしょう。

話を戻して…
今、私たちは、このキャンプファイヤーというものをもう一度、考え直すときに来ているように思います。

まず、たくさんの木を燃やすことによるCO2の排出を考えなくてはいけないでしょう。
そして、これだけ明るくなってしまった夜、せっかく自然の中に出かけるのですから、
子どもたちに本当の暗闇を体験させてあげることも、大切なのだと思うのです。
その暗闇が、想像力をたくましくしてくれるのではないでしょうか。

もちろん、スタンツを作ったり、合唱をしたりして仲間と協力することが不必要だとは言いません。
しかし、それは夜に行う必要があるでしょうか?
大きな火を焚いてする必要があるでしょうか。

今の子どもたちに必要なことは何かを問い直し、キャンプファイヤーというプログラムを考え直す時だと思うのです。

例えば…
火を焚かずに、コンサートのような形で、ステージにライトを当てて開催してはいかがでしょうか。
もちろん開催後にはライトを調整して、暗闇に戻して何らかの暗闇を感じる体験に結び付けていくのです。

以前チャレンジしたプログラムで、ナイトシアターというものがあります。
夜の広場にシーツをスクリーンに見立てて張ります。そこにプロジェクターで絵本を投影し、読み聞かせをするのです。
ページをめくるタイミングが暗闇になります。

肝試しのように、誰かがお化け役になって無理やり驚かせるのは、少し違和感があります。暗闇の中を歩くだけでも良いのではないでしょうか。

都会だけではなく、地方都市でも、本当の暗闇はどんどん少なくなってきています。
だからこそ、子どもたちに本当の暗闇を体験させ、そこからあふれ出て来る想像力を手に入れてもらうことを考えてはいかがでしょうか?

コメント

No.1   ロッキー

必要とされてきたこと、当然とされてきたことを問い直してみることって、本当に大事だなと思います。

大きな火は、心をドキドキとさせる何かがあります。魅力的なのか?怖さ?でも、なんか高揚感があります。
僕も当時は、何も考えずにキャンプファイヤをしていました。みんなで騒いで楽しかったし、キャンプをまとめるための自分やスタッフの腕を必要とする大事な場だと思い込んでいました。

今住む地域で40年以上ぶりに、火祭りが復活しました。ただ山の頂上で大きな火を焚き上げるだけの祭りです。でもそこには、五穀豊穣、家内安全、子孫繁栄などの、皆の想いが込められた火でした。地元の住職がお経をあげ、神事もしました。夜、町のみんなが灯りを消して、その火が上がる山の一点をみて、それぞれの何かを願ったのだと思います。山から見下ろす町は真っ暗でした。そして来年も火祭りは催されます。

桜井さんの話にある、暗闇の活動は、人の感覚を研ぎ澄まさせ、胸が高鳴り、想像力が爆発します。と僕は感じる、大好きな活動です。

どんな活動が、子ども達にとって必要不可欠なことなのか、それぞれの活動や自然が持つ力を今一度考えると、体験活動の意義がグッと深まるように感じます。

なんで人は自然に癒されるのだろうか?とかも、大事なことだと思います。

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