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コラム『カシオペイア』(アーカイブ)

コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第88号
協育と協動
稲松 謙太郎(NPO法人 国際自然大学校)

2022.1.26

私は現在、国際自然大学校の受託事業の専門部署に勤めています。基本的には、クライアントからの要望を形にして提案し、それを事業として運営するという流れで仕事をしています。

クライアントや要望はさまざまです。例えば、某区在住の子どもたちに向け一年を通した自然体験活動の企画と運営、中学校の移動教室プログラムの企画と運営、大学生に向けた野外活動の実習を含む特別授業、企業の新入社員向けの入社研修や管理職向けのチームビルディングの研修、他にもリスクマネジメント研修や救急法の研修などがあります。

このようなさまざまな事業がある中で、すべての事業に共通することは「体験活動がある」ということです。「体験活動がある」ということこそが特徴であり、我々の持っている手法の強みを活かした事業の展開であると思っています。
クライアントからの要望があっての仕事ですから、その要望をどう叶えていくのかを考えながら、事業を構築していきます。どれだけやっても要望をとらえて事業にしていくことや協働して事業を運営していくことはとても難しいことで、どんな事業でも毎回、課題や改善点が出てきます。それがひとつのやりがいでもあるのですが…。

今回の題名になっている「協育と協動」は私が2013年の3月に「志生塾」の卒塾フォーラムで発表したことです。
志生塾とは、国際自然大学校を創立した佐藤氏、桜井氏が作った私塾で、この走林社中の運営メンバーも多くの人が通っていました。私は当時、国際自然大学校の職員ではなく、他の自然学校に席を置いていましたが、応募すれば参加ができるということだったので、応募し参加をしていました。
卒塾フォーラムで述べたのは「協育=協力して子どもたち(対象者)を育てていくこと」と「協動=さまざまな人たちと協力して動くこと」が未来を創っていく上で必要なことだということでした。

今回この「協育と協動」の大切さを改めて感じたのは、某区中学校の移動教室が新型コロナウィルス感染症の対策のためにメジャーチェンジを余儀なくされたことからです。このプログラムは、新型コロナウィルス感染症が流行する前までは、いわゆる学校主催の移動教室型旅行としての事業でした。カリキュラムとは別になっていて、自由参加のプログラムとして夏期に行われており、「異文化交流×自然体験」を2泊3日のパッケージで提供していました。それがこの度、正式な移動教室として実施されることとなり、カリキュラムを考えた仕様に変化をさせなければいけなくなりました。

それまでは「異文化交流×自然体験」のコンセプトに沿って、2泊3日、留学生を一班に1名配置し、「英語を浴びる体験」をキーワードに仲間づくりゲームや自己紹介&国紹介のプログラム、自然豊かなハイキングコースを使ってのポイントラリー、留学生の国の踊りや歌を習って披露するキャンプファイヤーなどコミュニケーションに特化したプログラムを展開してきました。また、受け入れをしてくれていた施設とも良好な関係を作り、生徒や学校の細かい要望に答えながらフレキシブルで寄り添ったプログラムを展開してきたと自負しています。

しかし、移動教室として変化した今年度は、柱にしてきたコンセプトに加えて、教科として新たな柱も加わりました。何度もミーティングを重ねて実施しましたが、受け入れ施設の変更や、教育委員会の思惑と学校の要望など、コンセンサスが微妙にずれてしまい、課題の多い事業になってしまったと感じています。まさに「協育と協動」を一体にするために一枚岩になりきれなかったと言えます。

プログラムや場所が変われば、そこに従事する人も変わります。事業を企画運営する立場として、伝えなければいけないこと、実施するための方法を共有し、生徒たちの教育のためにその場に来る教員や施設の職員の教育にまで視野を広げ、今後を見据えた事業の展開をしていかなければいけないと痛感した事業でした。

まだまだウィズコロナの最中ではありますが、幅広に、そして未来に手を伸ばす事業を心掛けて、今後も自然体験をプロデュースしていかなければなりません。皆さんの意見も是非聞かせてください。議論を重ね、より良い活動を日本中に展開できるよう「協育、協動」していきましょう。

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