コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第56号
今、人材育成に必要なこと
原田 順一(NPO法人 湘南自然学校)
2021.5.26
多くの自然学校や青少年教育施設は、活動を提供するために学生ボランティアを募集し、育成していると思います。私が所属する自然学校も、同じように学生ボランティアを募集して育成しています。学生ボランティアは、子どもが好きであることは当たり前の条件であると思うのですが、それ以外にどんな人間性や能力が必要になってくるのでしょうか。参加する学生は、将来教員の道に進みたい、保育の道に進みたいという教育関連の職業を目指す人。社会勉強のため、自分自身の成長のため、と理由はさまざまです。ちなみに私は、「友達がやるからやってみよう」というのが始めた動機で、将来のためなどとは、一切考えていませんでした。それが、仕事となり20年近くやっているのですから、人生何が起こるのか分かりません。今となっては、そのくらいの気持ちだったから、体験したときの衝撃や感動が大きかったのかなと、勝手に思っています。
話を戻しましょう。学生ボランティアを育成するにあたり、皆さんは何に一番気をつけて指導していますか?また、どんな能力が必要と考え、育成していけばよいのでしょうか。たとえば、学生ボランティア側からしたら、以下のようなことが挙げられるのではないでしょうか。
(1)野外技術(テント建てや火起こし、ロープワークなど)
(2)子どもへのカウンセリングテクニック(問題行動などの対応)
(3)救急法などの安全管理
(4)保護者対応のテクニック
(5)資格取得
このような技術や資格は、目に見えて分かりやすいですし、確かに教育関連の仕事には役に立ちそうです。いや、実際に役に立つと思います。
では、上記のような内容を学べば、子どもたちを上手に管理して、活動に参加できるのでしょうか。実際はそんなことありませんよね?上手に火が付かなかったり、テントを建てられなかったり、子ども同士の問題をうまく解決できなかったりと、「なんでだろう、研修して教わったのに・・・」なんて経験ありませんか。よく初心者ボランティアが陥るパターンですね。それを解決しようと、また必死になって練習したり、本を読んでみたり、インターネットで調べてみたりするわけです。中にはそれで解決することもあるとは思います。
しかし、子どもたちの問題行動へ適切に対応することや、ボランティアと子どもの関係性をうまく築いていくには、上記のような技術の前に重要なことがあるのではないでしょうか?もちろん、命懸けの登山や、専門的な知識がいるアウトドアスポーツなどは、技術の習得が最優先されるのかもしれません。一方で、私の所属する自然学校のボランティアスタッフにいきなりそういった技術が必要かと言われると、そうとは言えません。そして、「技術」よりも自分自身の「内面」に最も重要なことはあるのではと思っています。それは以下のような心や、考え方なのだと私は考えます。
(1)どんな子どもでも受け入れられる心
(2)子どもを自分の型にはめない考え方
(3)「今」を見つめながらも、その先にある子どもたちの「未来」をみた考え方
つまり、どんなマインドを持てるのか、ということです。子ども相手に、細かいことを気にしすぎたら、いいパフォーマンスは生まれませんし、ネガティブな事を伝えすぎても活動自体が嫌になってしまいます。いわば、「こうあるべき」という固定概念は、自分自身も子どもも苦しめてしまうだけなのではないでしょうか。
おそらく、学生ボランティアの多くは、始めのうちは技術の習得に走りがちになりますし、メンタルやマインドというのは、目に見えるものではないので、最初から深く理解することは難しいかもしれません。それでも、私はメンタルやマインドが一番重要だと考えて育成にあたっています。それは、その学生ボランティアたちも、やがて親になり、社会人になります。その時に、子どもを受け入れる心や、未来を見つめる目を持った大人が増えれば、家庭や学校、地域の教育が繋がり合い、一枚岩となってより良く育てる状況になるのではないでしょうか。そして、より良い社会創りに繋がる。私は、そんな未来を想像して人材育成しています。
No.1 ロッキー
学生ボランティアのみなさん、たくさんの気づきが自然体験活動のリーダーをすることであるよなぁと振り返っています。原田さんのように人生が変わる人もいる!
人と人が関わるコミュニケーション
人と自然とのコミュニケーション
人との交わりの中で感じる心の動き
自然の中で人と関わり感じることは、
子どもたちにとって欠かせない原体験となり、
リーダーたちにとってもかけがえのない生きる力を育んでくれると思います。
自然って偉いよなぁ。
誰にも何も言われず、自分の役割を文句ひとつ言わずに、
爽快にやり遂げています。
自然が先生。
リーダーそれぞれの個性がグッと輝いて、
それぞれ素敵な人になってもらいたいですね。
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