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コラム『カシオペイア』(アーカイブ)

コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第66号
まちづくり参加への勧め
白井 健(NPO法人千葉自然学校)

2021.8.11

私は約1年前から知人達とともに、「リノベーションまちづくり」という取り込みを行ってきました。私の住まいの近くにある「館山駅前」を中心に、空き家・空き店舗などの遊休不動産を改修し、新しいコンテンツを作り出すことで、そのエリアの価値を高めていくことを目的に行われているまちづくりの手法です。皆さんも、駅前の商店街が「シャッター街」となってしまっている光景を目にしたことがあるのではないでしょうか。

自動車社会になる前は、鉄道での移動が主な交通手段でした。必然的に「駅前エリア」には生活必需品などを売るために商店が集積し、物流の拠点となり、地域のコミュニティを形成する機能を担っていました。
しかし、現在、特に地方では自動車の所有率が高くなっている状況があります。バイパスなどの車道が郊外に整備され、その道沿いにチェーン店や大型スーパーなどの商業施設が並んでいる姿が、どこの地方都市でも見られます。
駅前の商店が持っていた機能は大型店に奪われ、シャッター街となり、それまで形成されていたコミュニティも希薄化してしまいました。そして、これらの課題を解決していこうというのが今回のプロジェクトの目的です。

具体的なプロジェクト内容としては、空き店舗となってしまった物件を借り上げ、その店舗の歴史やストーリーを汲んだ事業を展開していくというものです。
その中で私は、知人とともに法人を設立し、DIYで改修しながら飲食店をオープンすることに取り組んできました。オーナーさんはなんと大工さんでもあり、施工について教わりながら進めてきました。
また、2019年に房総半島を襲った台風で解体されてしまうことになった家屋から廃材をいただき、 その材料を使いながら改修も行ってきました。
コロナ禍で前途多難ではありますが、つい先日7月18日にオープンすることになりました(お店の経営は私ではなく違う方が行なっています)。これからはこの「WEEKEND」を起点に、このまちで活躍する方にお話を聞く会を開催したり、廃材を使ったDIY教室をなど開催する予定です。それらの企画を通して新しい人の繋がりができれば良いなと考えています。
また新しくオープンした様子を見た他の空き店舗を持つオーナーさんが、同じように、活用する気持ちになってくれることで、駅前に活気が戻ってくる一助になればと思っています。この続きはまだまだありますので是非直接お話しできればと思います。
※画像はこのプロジェクトを始めるときにメンバーで描いた「WEEKEND」周辺の未来絵です。



私がこのリノベーションまちづくりのプロジェクトに関ろうと思った理由は、青少年教育施設や自然学校がもっとまちと繋がっていくべきだと考えたからです。特に地方の自然学校や青少年教育施設の立地条件は、人里から離れた山奥や、自然度が高い場所など、物理的に市街地からは離れ、まちとのつながりを作りにくい環境が多いように思われます。何か事業を企画する際に、自分たちの組織内で完結してしまいがちで、困りごとや課題があった時に相談できる相手が少ないこともあるのではないでしょうか。
だからこそ、青少年教育施設や自然学校から意識的にまちとつながりを持とうとすることで、地域で現状や今起きていること、どのような人がいるのか、地域の課題など、コミュニケーションを通して知る必要があると思ったのです。

約1年プロジェクトを行なってきて得られたことは、大きく2つあります。
まずひとつ目は、地域で活動している方の顔がはっきりと見えてきたということです。もちろん自然体験活動やアウトドアという分野以外の方も多くいます。
「こういった案件はこの人に相談しよう」「この人とこの人を繋げるとおもしろいことが起きそうだ」といったように、頭の中に地域の方のマインドマップ的なものが思い浮かぶようになりました。逆に「自然体験のことやアウトドアなら白井さんに相談してみよう」ということも増えてきました。
このような流れやつながりが作られると、青少年教育施設や自然学校が、地域からどのようなことを求められているのかもより明確になってくるのではないかと思います。

そして、もう一つは私たちが単独では解決できない組織や施設の課題の解決のヒントを得られるかもしれないということです。まちづくりには多様な方が関わっています。建築士、webデザイナー、ライター、料理人、大工、行政職員など普段の業務では交わることのないつながりを作ることができます。ひょっとしたら私たちの関わる青少年教育施設や自然学校持つ課題の解決に協力してくれるかもしれません。

青少年教育施設や自然学校も今まさにリノベーションする時期に差し掛かっているのだと思います。時代の流れとともに、その形を修正し作りなおしていくことで、新しい価値を生み出していくことが必要なのだと思います。
皆さんの職場の近くにも誰かしらまちづくりに関わっている方がいらっしゃるのではないでしょうか。いや、必ずいらっしゃると思います。職場の近くだけでなくご自分が住んでいる地域でも良いと思います。是非、自ら飛び込んで、新しいつながりを作ってみることをお勧めします。 

コメント

No.1   ロッキー

自然学校の活動の場が広がっていますね!
でも自然学校で働く皆さんの前向きな姿勢が、これからの社会ですごく求められると感じます。というか、前向きな姿勢を持つ人が繋がるきっかけと場を作る事でしょうか。

僕の住む地域でも、なんとなくですが、移住者と、地元の人が繋がる動きが出始めました。僕も移住者として顔を出させていただいています。

ゆっくり、じっくり、のんびり、自然な流れの中で仲良くなっていきたいなーと思います。

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No.2   白井健

ロッキー、コメントありがとう。
そうですね。これからの地域の在り方として、それぞれの立場や役割を超えてつながっていくことが大切だと思います。これまで担ってきた役割では、賄いきれない局面に入ってきているの地方から始まっているのではないかと思います。
しかし、それを前向きに、楽しみにながら取り組める人がいる地域は強いですよね。
そんな繋がりを自分の足元と、全国に広げたいけたら社会は変わって行くのだと思います。

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