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コラム『カシオペイア』(アーカイブ)

コラム『カシオペイア』(アーカイブ)第68号
マスメディアの在り方から我々のやるべき事を考える
関口 千尋(NPO法人国際自然大学校)

2021.8.25

 皆さんは、「池田小学校事件」をご存知でしょうか?今から20年前の事件ですので、モモの部屋のメンバーの皆さんの中には、まだ生まれてなかった方もいるかもしれません。当時、私は19歳でしたので、テレビのニュース番組で事件を知った記憶が在ります。本当に凄惨な事件でした。

 事件の詳細は、割愛しますが、「池田小学校から20年」というニュースの中で「学校側の安全管理体制に問題があった」という記事を読みました。その記事の中では「容疑者が犯行に及んでいる中で、教員は児童の安全確保よりも通報を優先し、職員室に向かった。」という記載が有りました。

 まるでこの教員が、「目の前の子どもたちを見捨ててしまった」くらいの書きっぷりに、私は疑問を感じました。この記事の全体的な主旨は「20年前と今の学校の安全管理体制の違い」だったのですが、当事者の方、事件に関わった方がこの記事を読まれたら、どう思ったでしょうか。凄く悲しい思いをしたのではないでしょうか。と言うのも、こちらの記事には「事実」は記載されていますが、「真実」を読み取ることは出来ないと思うのです。むしろ、真実を捻じ曲げて伝える「可能性」があると思います。意図的なのか、偶然なのか分かりませんが、伝える事の難しさを感じました。真実は、その場に居た方にしか分からないことです。平和な学校に刃物を持った人間が突如現れ、狂気的な行動を取る。その瞬間に対応した行動には、必ず「意味」があると思います。その「意味」を、まるで遮るような形で情報を伝えるマスメディアの在り方は如何なものでしょうか。報道の自由、表現の自由なのかもしれませんが、私は発信する責任の方が大事だと思います。真実を伝えるように努力するべきではないでしょうか。

 新型コロナ変異株、ワクチン接種の副反応、オリンピックの開催等々、最近のマスメディアの報道には真実が見えない事も沢山有ります。しかし、その一方で我々が提供する自然体験活動には「真実」しか在りません。

 雪上プログラムでは雪の冷たさ、キャンプファイヤーや野外炊事では火の温かさ、ナイトハイクでは夜の静けさ、星空観察では瞬く星の美しさという「真実」を目の当たりにすることができます。私が先に述べたメディアの記事はあくまでも「事実」を伝えますが「真実」は分かりません。しかし、自然で体験できることは事実であり、真実です。そして、その真実を体験し、感じ、考えさせる事が人を育てるのだと思います。「百聞は一見に如かず」と言うことわざが有るようにマスメディア等を中心とした情報から得た知識よりも、自ら体験して得た知識は脳裏に焼き付きます。脳裏に焼き付いた知識は、その瞬間は役に立たないかもしれませんが、成長する過程で必ず役に立つからです。


 今、自然体験活動の世界は、コロナを機に苦境に立たされています。外出自粛に伴い、リモート/オンラインの普及が進むことで多くの可能性が広がる一方で、「真実」を体験する。子ども達の場が刻一刻と失われています。しかし、先ほども述べたように真実を伝える事が出来る自然体験活動は人を育てる上では必要不可欠です。そんな必要な不可欠な場を失わない為にWithコロナ・Afterコロナといった、来る未来を想像し、考え続け、こどもたちの為に我々がやるべきことを前向きに取り組んでいきたいですね。
 そして、モモの部屋での活動を通し、メンバーの皆さんとそういった議論を交わしていくことが改めて重要だと考えさせられました。

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