未定稿小説『奥山村物語』38
2020.8.4
その中で福田さんはひとつの提案をしました。
子どもたちに3つのルールを課したいと思うのです。
1、 集合解散場所の社会教育会館プレイホール6階までの上り下りは階段を使う。
2、 移動の電車の中は座らない。
3、 お昼のお弁当は自分で作る。
この3つを提案しました。
陽子さんが、
「何で、そんなルールを作るの?」と福田さんに聞きました。
「そうですね、実は、子どもたちにどうしてこんな風に年間の教室をするのかというと、思い出会のときに、お母さん方が、キャンプでのいい習慣は数日すると元に戻っちゃうと言っていたでしょう。それを戻さずに、子どもの習慣にするにはどうしたらいいかと考えたんです」
「だから、毎月するんでしょう」と陽子さん
「そうです、でも、子どもたちは、そういう習慣を自分たちが身につけないといけないんだとは思ってはいませんよね」
「ええ、自然に変わってくのがいいのでしょう?」
「はい、でも、子どもたち自身が、奥山村こども自然学校での体験が大切で、自分たちは、変わっていくんだということを意識しないと変わらないと思うし。やはり、元の習慣に戻ってしまうことも多いと思うんですよね。ですから、そのきっかけというか、意識するためにいくつかの体験は強要したらいいと思うんです」
「なるほど…それが、3つのルールね」
「はい、そうです」
「でも、お弁当を自分で作るというのは、結構ハードル高いわね」
「どうしてですか?」
「まず、この活動は、休日に行われるから、お母さんたちにとってはお休みの日よ。お弁当作れというのは結構大変なお願いよ」
「だからこそ、子どもたち自身に作ってもらうんです」
「わかってないな~、子どもが1人で勝手に作れるわけないでしょう。結局お母さんが一緒に作るか、ほとんどお母さんが作ることになるのよ」
「なるほど…」
「でも、1年間続けたら、作れるようにならないかな」
「う~ん、まあ、子どもによってはそうなるかもしれないけど…」
「じゃあ、こうしたらどうだろう。お弁当はおにぎりに限る。それ以外はいけないことにするんだ」
「そうね~それならなんとかなるかな~」
「他の2つはどうかな?」
谷口君が、
「体調が悪い子とか、もし、体の不自由な子が参加してきたら、それは許してあげないといけませんよね」
「もちろんだ、例外とする」
「それならいいと思います。それに、その方が、自分の荷物の重さも身に沁みます、そうすると、荷物のことも自分で工夫するかもしれませんからね」
「よし、じゃあ、この3つを、ルールとしよう」