未定稿小説『奥山村物語』58
2021.1.4
福田さんたちも、食事を始めました。
節子さんが、「怪我の功名かもしれないわね、あまり人数が集まらなかったから、一軒毎に人数を4人から2人に減らしたでしょう。そしたら、逆にグループ数が増えて、受け入れる農家が増えて、今回は断念しなくちゃいけないと思っていたおうちまで、子どもが行くことになって、みんな大喜びよ。」
「なるほど、いつも、お手数かけて申し訳ありません」
「こっちも楽しいのよ。ね、省三さん」
「まあな」と、省三さんがニヤニヤします。
「そういえば、三枝君は?」
「心配するな、子どもたちのために畑で、一生懸命準備しとるよ。もう、大概のことは1人でしよるぞ。小学生なのにたいしたもんじゃ。」
「そうですか、それはたくましい」と、福田さんは、今回の三枝君の一件を思い返し、これでよかったんだと、自分に言い聞かせるのでした。
昼食を終える頃には三々五々、地元の方々が、子どもたちを迎えに集まり始めました。
今回の畑の教室では、子どもたちは、ほとんどの時間を農家の方々のうちで過ごします。
昼食後、みんなが仲良くなるための時間、そして、農家の方々を紹介する時間のあと、農家の方々とそれぞれの畑にいったあとは、夕食前まで、各戸で過ごします。最初の晩の夕食は、教室の仲間と共に食べ、学校に泊まりますが、翌日、朝食を済ませた後は、3日目の夕方まで、丸々2日間を各戸で過ごすのです。
スタッフが時々回りますが、基本は、2人ほどの子どもが一軒の家でお世話になっています。基本、男の子は男の子、女の子は女の子のペアでお世話になっているのです。
誰が、どのお家にお世話になるかは、節子さんと勉君が調整してくれました。女の子のおうちには、女の子の娘さんがいるうちが多かったです。もちろん独立して、今は家に居ないお宅も多いのですが、やはり、女の子を育てたことのあるお宅に女の子がいく方がいいという判断でした。逆に男の子はあまりそのような心配をすることなく振り分けたようです。
また、できるだけ、昨年、または田植えにきた子ども達は同じペアにして、初めての子は初めての子どもでペアを組ませました。
初めての子どもが、経験差で引け目を感じたりしないようにという配慮でした。
食後のゲームや、対面を終えると、それぞれのお家の方に連れられて、軽トラックの荷台に乗っていきました。
福田さんも谷口君も少しまずいかなとは思いましたが、そのまま、行かせることにしました。子どもたちは大喜びです。
農家の皆さんもなんの抵抗もなく、「しっかり、ここに捕まっているんだぞ」と口々に注意を与えて運転席に乗り込みます。ご夫婦で来ているおうちは、奥さんが、「心配だから私も荷台で行くわ」と、自らも荷台に乗り込み、子どもたちの面倒を見ながら、走り出しました。
もちろん堤光さんの御宅にはあかりちゃんが行くことになっているのはいうまでもありません。
そして、堤省三さんのお宅にはてる君と寛太君が行くことになりました。