未定稿小説『奥山村物語』57
2020.12.25
「こりゃありがとうございます。今度私の子供も、いつか参加させていただこうかな。」
「ぜひ、ぜひ」
「冬休みはあるのかい?」
「はい」
「それはありがたい。この仕事は、年末年始がないものだから。子供にはいつも寂しい思いをさせているんだ。」
「そうですね。是非お待ちしています。」と言って、福田さんは名刺を手渡しました。
「ありがとう、連絡させてもらうよ。」
運転手さんが、子供たちの方を見ると、谷口君が音頭をとって、「ありがとうございました」と、運転手さんに向かって、手を振ったりお辞儀をしました。
運転手さんは嬉しそうに手を振ると、勢いよくバスに乗り込んでいきました。
バスが、ゆっくりとグランドから出て行くと、谷口君は子供たちに向かって、
「さあ、みんなお腹すいたんじゃないかい? お弁当の時間にしようと思うんだ。荷物を部屋に入れて、食堂に、お弁当を持って集まって下さい。でも、どこが自分たちの部屋か、どこが食堂かわからないよね。リーダーと一緒に行って、その場所を説明してもらいながら準備してください。」
「は〜い」
リーダーは、三々五々、グループごとに移動を開始しました。
すぐに校舎に入るグループもいれば、まずは、グランド周辺を説明して歩くグループもあります。
それを見ながら、福田さんは省三さんや光さん、節子さんたちと、出迎えにきてくださった人たちに歩み寄って、お礼を言いました。
そして、一緒に、食堂で食事をしましょうと、皆さんを誘いました。
「おい、食堂って、どこじゃ?」
と、省三さんが怪訝な顔をします。
それもそのはずです。学校には食堂など無かったのですから。
「ああ、そうですね。手洗いとかができる家庭科室を少し整理して、食堂ということにしました。」
「ああ、なるほど」
みんな微笑み合いながら、家庭科室こと、食堂に向かいました。
光さんたちには、先発していたスタッフたちが準備をしていた、おにぎりとお味噌汁、そして、節子さんから差し入れてもらった、お漬物が添えられていました。
ボチボチグループ毎にお弁当をかかえて、食堂に入ってきます。
谷口君が「グループ毎に集まったなら、お味噌汁をもらって、食べ始めてください。」と、案内しました。
グループ毎に「いただきます」と声を合わせて食べ始めました。