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未定稿小説『奥山村物語』

未定稿小説『奥山村物語』23

2020.4.15

三枝君の自転車旅行

「しかし、勉君の車と、省三さんの軽トラ2台で行くと、行列が長くなるな…勉君、君の車に、省三さんと私を乗せてもらっていくというのでもいいかな?」

「もちろんです、もともとその予定で来たんですよ」

大慌てでご飯をかき込んだ勉君が車を運転して、3人は出発しました。

奥山村から山崎市までは車で30分ほどです。

三人で、あれやこれや話しているうちに、あっという間に山崎市に入りました。

そして、国道20号線と、奥山駅への分岐の交差点に到着しました。まだ、三枝君は着ていないようです。

福田さんが携帯電話で、谷口君に連絡を入れます。

谷口君も、もうすぐ山崎市に入るとのことです。

ということは、あの登り坂を超えてこないといけないから、もうすこしかかるな。と、省三さんは言って、「もう少し、進んでみるか・・・」と言い始めました。

「いや、ここでまちましょう。谷口君との約束はここということにしています。あまり移動をすると、お互い見つけられなくなり、すれ違うかもしれません。」

「そういうものか」と、省三さんは不承不承です。

「そのかわり、少し歩いて、あの、先が見通せる歩道橋に登ってみましょうか?」

「そりゃあ、名案じゃ」と、省三さんはそそくさと、歩道橋に向かって歩き始めました。歩道橋で、かれこれ30分以上、省三さんは右に行ったり左に行ったり、落ち着かないことこの上ありません。

しかし、とうとう三枝君の姿を、省三さんが捉えました。

「お〜きよった、きよった、あれはそうじゃろう。」

というが早いか、後ろから、「福田さ〜ん」という声がしました。

谷口君が車で先行して、着いていたのです。

自転車を探すあまり、谷口君の車を見落としていたのでした。

省三さんは歩道橋の上で大きく手を振って、「ひろし〜がんばるんじゃ〜」と叫んでいます。

その省三さんをそのままに、福田さんと勉君は、谷口君に向かって、手を挙げると、急いで歩道橋を降りていきました。

「三枝君の様子は、どうだい」

「はい、すこぶる順調です」

「それはよかった」

「では、車のところで出迎えることにしよう。」

「省三さんはどうしますか?」と勉君。

「大丈夫、三枝君と一緒に走ってくるだろう」

「そうですね」

そういうと、勉君は車のトランクを開けて、スーパーの買い物籠を出してきました。

そこには、スポーツドリンクやバナナ、それに、栄養ゼリーなどが詰め込まれていました。

「すごい量だね」

「節子が、あれもこれもと詰めてよこしたんです」

「節子さんも、色々考えてくれているんだね。ありがたいことだ。」と福田さんは勉君に頭を下げました。

省三さんが、走ってきます。

そのすぐ後ろに三枝君の自転車が、スピードを緩めて付いてきます。まるで、マラソン選手の伴走自転車のようです。

その三枝君は微笑んでいます。

今までにない爽やかで、力強い微笑みでした。

その顔を見て、福田さんは、意味もなく、これは大丈夫だ、きっと全てうまくいくと、感じたのでした。

車のところにきて、みんなで、「よくきたな〜」と、代わる代わる三枝君と握手したり抱きついたりしていきます。

そして、勉君が、「何がいい?」と、買い物籠を見せます。

三枝君は、びっくりして、「今回の三日分の栄養ドリンクより多いですね。」と笑いました。

「確かに」と谷口君も笑います。

「まあ、みんなでご馳走になろうじゃないか」

「はい」と、三枝君が力強く答えます。