未定稿小説『奥山村物語』32
2020.6.18
そんなお話をすると、陽子さんから節子さんに、節子さんから勉君へと伝わり、村中に伝わりました。すると、あっという間にいろいろなものが集まってきたというわけです。
畳などは、畳屋さんから、交換した畳の程度のいいものの寄付がありました。
また、茶碗や、布団などは各家庭から少しずつ集まってきました。
皆こんなもので良いのかな〜と言いながら持ち寄ってくれたそうです。
それに、勉君が一人ずつ、大丈夫ですよと対応してくれたのです。
結果、奥山小学校には沢山の布団やお茶碗が積み上げられたのでした。
そんなわけで、スタッフの合宿の時は、布団干をしたり、掃除をしたり、という作業もついてきます。
土曜日の朝に東京を出て、昼前に奥山小学校に到着すると、まず、みんなで昼食を作ります。
食材などは谷口君が車で運び込んでいます。谷口君は、大学の授業はもうそれほどなく、金曜日の夜、大学が終わってから食料や備品を買い出し、土曜日の朝一番で車を走らせてくれました。福田さんも車に同乗してきました。
スタッフトレニーニングの面々は平野君が引率をしてくれます。
食事は全て、グランドでの野外炊事です。
毎食作れば、自然に火の焚き方や、料理の腕前もあがっていきます。
谷口君はそのために、得意不得意ではなく、交代で、火を焚かせ、包丁を握らせました。
おかげでみんなメキメキ腕を上げました。
福田さんが少し驚いたのは、ホウキを使っての掃除の仕方を、ほとんどの者がしたことがなかったことです。そこで、掃除の仕方も教えてあげなくてはいけませんでした。
キャンプのトレーニングというよりは、生活実習の様相です。
しかし、夜にはロープワークの実習が始まります。
そして、次の昼間もその実戦として、青い、工事用のシートを、グランドに竹の棒とロープを使って屋根のように張りました。このように張っておけば、雨が降っても、この下で野外炊飯もできます。
しかし、今回はトレーニングなので、張った途端に今度は、たたみます。
谷口君は、この張ったりたたんだりを、3度も繰り返しました。
同じ場所に貼るのではなく、校舎に沿って張ってみたり、グランドの真ん中に張ったり、グランドの向こうのフェンスのところに張ったりと、条件を変え、みんなで、工夫することを要求しました。
谷口宅口君は言いました。「ロープワークはね、覚えただけではダメなんだ。その場所で、どのようにテントを建てるか、シートを張るか考えて、それのあったロープワークは何があるかを考えて、使うことができないといけないんだ」
「だから、ここはこのロープワークという、固定した考えは捨てて欲しい。基本的にはそうなんだけど、それがいつも正しいとは限らないのさ」
「うまくいくにはだから、経験が重要になってくる。だから、何度もみんなで張ってもらってるんだ。わかるね」
みんなは、大きくうなづきました。
「だから、もうひとつ。そのロープワークの特性をちゃんと知っておくことが重要なんだ。輪が作れて、締まっていかないとか、繋いで解けないけど、解きたいときにはすぐ解けるとか、長さが変えられるとか・・・それを知っていれば、必要なところに必要なロープワークを使えるだろう」
「はい」みんなの目が輝きます。
「じゃあ、もう一度、今回覚えたロープワークのおさらいをしよう」
そんなふうに、みんなどんどん技術を習得していきます。
それにしても、谷口くんの技術は大したものだと福田さんは感心していました。
「ボーイスカウト恐るべしだな」
おさらいは各自がするようにして、当番の人は食事の準備に入ります。
そのようにして昼食が終わると、午後には、片付けをして、帰路につきます。