未定稿小説『奥山村物語』37
2020.7.25
「ええ、それはいいね~」
「本当ですか?」谷口君が乗り出してきます。
「ありがたいね」
「社長さんが、こういう子どもの教育は大切だとわかってくださってね、スタッフは優遇してあげようということになったの」
「でね、これが、奥山村こども自然学校のスタッフパスのサンプル」
「どういうことですか?」福田さんは怪訝な顔をしています。
「お店での身分証明よ」
「な~るほど」
「それでね、これがそのまま名札になるようにしてみたの。どう?」
「すばらしい!」
「この印刷とかは、どうすればいいですか?」
「心配しないの、こんなの作るのは、会社に頼んで、ボランティアでしてあげる」
「陽子さん…」
「これぐらいは何でもないから、気にしない気にしない。言ったでしょう、わたしは、結構偉いのよ~」
みんなが顔を見合わせて笑いあいました。
「陽子さん、その名札のことですが、子どもたちには、あだ名で呼んでもらいたいと思うんです。あだ名でもいいですか?」
「う~ん、お店には、やっぱりちゃんとした名前がいいと思うんだよね…じゃあこうしましょう、裏表に名前と、あだ名をそれぞれ刷るの」
「いいのですか?」
「そんなこと、何でもないわよ」と、陽子さんは微笑みます。
「平野君、あだ名のリストはある」
「ああ、それはまだないです」
「手書きでもよろしければ、私が持っています」と、谷口君が書類のファイルの中から引っ張り出します。
「いいじゃない、コピーとってくるわ」と、陽子さんはそのペーパーを持って部屋を出ていきました。
すると、平野君が「陽子さんはすごい力持ってますよ。アウトドアショップの社長さんに一緒に会わせていただきましたが、もうため口でしたから。それに、さっさと企画書作って、社長さん口説いてくれたんですよ。見習わないといけないと思いました」
「そうか、それはそれは…」福田さんは微笑みました。
その後、日をおかずに、スタッフの最後の勉強会が開催されました。
谷口君から各チームの発表があり、続けて、名札の配布がされました。
そして、その名札の持っている、プレミアムな価値も説明されました。
みんな、大喜びです。
なかには、「え~、買っちゃったよ~」とぼやく者もいましたが…
そして、それぞれのチームが担当するキャンプと、チーム内の役割を自分たちで決める旨の指示もされました。
各チームで話し合いがもたれ、リーダーや記録といった役割を決めました。
もちろん、年間事業を担当するチームは、説明会の準備の段取りを谷口君らと進めました。