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未定稿小説『奥山村物語』

未定稿小説『奥山村物語』11

2020.3.8

その後、夕食後、今度は、各貰い風呂受け入れ担当のご家族の方々に子どもたちを連れて行ってもらい、お風呂に入れてもらいます。

そして、帰りだけ我々で迎えに行きます。


最後に、福田さんが「みんな、最後にちょっと話してもいいかな? 時間が遅いからできるだけ手短にするけど…」

みんな、福田さんを見てうなづきます。

今日は、まず、私の計画の甘さ、判断の未熟さを思い知りました。川遊びでの疲れと帰りの時間の読みの甘さです。子どもたちは、私たちの予想以上に川ではしゃぎ、予想以上につかれました。そして、帰りの道に多くの時間を使ってしまいました。したがって夕食があのような状況になりました。

しかし皆さんの迅速な対応で事なきを得ることができました。ありがとう。

平野君と谷口君が先頭に立って野外炊飯の練習もしてくれていたということも聞きました。皆さんに感謝です。

今回のことで、トレーニングは重要だなと、痛感しました。そして、もうひとつ、同じようにトレーニングをしなくてはいけないと思ったことですが、三枝君のような子がきっとこれからも多く参加してくるんだろうなと思います。また、あかりちゃんのような子の対応についても、もっと勉強しなくてはいけないと思います。

すなわち、子どものここをのケアーのためのトレーニングと、キャンプの技術のトレーニングの両方をしなくてはいけないということです。

このキャンプが終わったら、最初に始めるのは、来年のキャンプに向けて、スタッフトレーニングを始めようと思います。皆さんには、ぜひご協力願いたいのです。」

みんな黙って、大きく頷きました。言葉はありませんが、その眼にはみんな強い意志が込められていました。


翌日の朝、子どもたちの動きは見違えるようでした。

昨日と同じ朝ごはんだと谷口君が告げると、子どもたちが、勝手に準備を始めていくのでした。

それでも谷口君が、色々指示をしていくのを見て福田さんは

谷口君に歩み寄り「少し、子どもたちに任せてみていてもいいんじゃないかな?」とささやきました。

谷口君はえっという顔をしました。

「昨日の朝に比べて、子どもたちの動きがとてもいいとは思わないかい? きっとほっておいてもちゃんと準備できるんじゃないかな? 聞かれたことと、危ないことだけ注意してもらえるかな?」

谷口君は「はい、わかりました」と答えて微笑みました。

(子供たちはこんなにも急激に変化していくものなのか…)と福田さんは微笑みながら子供たちを見ています。

陣頭指揮をとっているのはテル君と寛太君です。

机を運び、食事の材料の入った入れ物を運んで机の上に並べます。このような力仕事はテル君が。

皿やコップを運んで並べるのは寛太君が、それぞれ分担をして、ほかの子たちを率いています。

そして、なんと予定の時間通りに食事が始まりました。

テル君が、「ふくださ~ん。たべようぜ、いただきますしてくれよ。」と叫びます

「よ~し、ではみんな姿勢を正して、いただきます」

みんなも声をそろえて「いただきます」と叫びます。

そして、わいわいがやがやと食事が始まりました。


片付けも、もう子供たちの独壇場です。スタッフは逆に子どものお手伝いをする格好です。


福田さんが片付けている子供達を見ていると、田中裕子さんがそっと寄ってきて、

「福田さん、すごいですよ、今日は朝ご飯完全に完食です。昨日と同じ量なのに、昨日はだいぶ残っていたのに、今日は綺麗さっぱりです。」

「そう、それはすごいね。」

するとそこに、今野さんも近づいてきて、「もう、私することないわ」と微笑みます。

福田さんが、「あかりちゃんはどう?」と聞くと、

「もうげんき!今テル君と一緒にあらいものを奥でしています。兄さんみたいですよ。テルくん」

「それはいいですね。だんだん、このキャンプ全体が家族みたいになるといいですね。」

「福田さんがお父さんだとしたら・・・お母さんは川上さんかしら。」

「お兄さんぐらいにしてもらえると嬉しいがな」

「それは無理があるでしょう」と、田中さんがいうと、今野さんと二人で大笑いをしました。福田さんも一緒に破顔します。

(いい感じになってきたぞ)と、福田さんは思いました。



軽トラックが近づいてきました。

公民館の庭には入ってこないで、道端に止待った軽トラックから、堤光さんが降りてきました。

福田さんが頭を下げながら、近づいていくと、光さんが、「元気な声が聞こえてくるな〜」と、声をかけてきます。

「おはようございます。きょうはよろしくおねがいします。」と挨拶をすると、「おうおう、おはよう」

「なにか〜?」と、福田さんは少し不安に思って尋ねると

「いや、今日は予定通りだ。よかんべ?」

「はい。お願いします。」

「あとな、省三さんが、昨日の件は万事オッケーだと伝えてくれっちゅうことだ。夜、連絡があって、わしも手伝って電話かけたんだが、迷惑かけちまったな。」

「いいえ、こちらこそ申し訳ありません。お手数おかけしてしまって」

「ま、勘弁しろや、こんなことするのは、この村じゃ初めてじゃから。じいさんやばあさんは、嬉しくって、ついつい、色々してやりたくなっちまうのよ。」

「はい、お気持ちは、充分わかります。私の方こそ配慮が足りず、申し訳ありませんでした。」

「いや、それを、伝えにきただけジャケ」

「そうでしたか、わざわざ申し訳ありません。」

「何も、畑いく通りがかりじゃ。わしゃこれから畑行って準備しとるからな。」

「ああ、そうでしたか、よろしくお願いします。」

「じゃあな」

「はい」

福田さんは、堤光さんの後ろ姿に、深々と頭を下げました。

そして、すぐに平野君を呼び、堤光さんからの言伝を伝えました。

平野君は「おそるべし長老、ですね」とニヤリと笑いました。

「ああいう人は、大切にしないといけないね」

「はい」


そんなことをしているうちに、子供たちはほぼ片ずけを終え、畑に行く準備を整え始め、庭に出てき始めています。

先に出てきた子供達と谷口君が駆け回って遊んでします。

よく見ると、ただ駆け回っているのではなく、地面に何か書いて、そこを回っているように見えました。

(あれはもしかして、目玉焼き?…懐かしいな〜…谷口君があんな遊びを知っているとは、意外だな)

子供たちが、ほぼでてくると谷口君が目玉焼きの白身の部分に子供たちを集めました。そして、真ん中のキミの部分に自分がたちます。

子供たちを見回しながら、

「朝ごはんは、みんなすごいよく食べたね。感激したよ。そしてもっと感激したのは、みんなのご飯の準備とかたずけの早かったこと。すごいね〜」

子供たちが、ウヲ〜っと、声をあげます。

「みんながこんなに手早く色々できるなんて、ビックリだよ。ウチでもお手伝いをしているのかな?」

今度は、ザワザワとしています。

大きな丸に集まっているので、声がお互いに反響します。

「あれ、そんなしないのかな?」

「ウチはさ、食器とかは、ショクセンキで洗っちゃうからさ」と、テル君が叫びます。

「僕は時々手伝うよ」と、寛太君。

するとテルくんが「寛太、カッコつけてる〜」みんなが大爆笑です。

「本当だよ」と寛太くんが反論します。

谷口くんが割って入って、「わかったわかった。寛太くんは、夏休みにこの村の親戚のお家に来たりして、お手伝いもするんだよね。テルくんのうちは、お金もっち〜ということだ。」

と、丸く収めました。

そして続けて、「お家に帰っても、食洗機のないお家は、お手伝いすると、お父さんやお母さんが、私みたいに感激してくれると思うよ。」

「お小遣いくれるかな?」

「それはどうかな?」

「でも、きっと褒めてはくれると思うよ」

「じゃあ、やってみるか」とだれかが声をあげました。

「そうだね」

と谷口くんが応じて、続けて、「では、今日の予定を話します!」

みんなは前のめりになりました。


ちょっと早めのスタートに福田さんは少し戸惑いましたが、谷口君に任せることにしました。


谷口君は今日のトウモロコシの収穫のこと、その後、みんなでご飯を作ることなどを説明しました。

子どもたちからは、誰が食べに来るの?

昨日お風呂に入ったお家の人はくるのと、矢継ぎ早の質問があがります。

谷口君は整理して、丁寧に答えていきます。時間がかかりますが、そこは早めに始めたおかげで、問題ありません。


この質問ぜめを予想して、早めに始めたのかな?だとしたら、大したもんだだな〜と、福田さんは感心していました。


その長い質問ぜめも一通り終わり、いよいよ出発です。

みんな、もう、勝手知ったる我が家ならぬわが村とでもいうように、づんづん進んでいきます。

たった一晩泊まっただけなのに、子供がこんなに変わるとは、驚いたもんだと、福田さんは舌を巻いた。

子供はたくましい、私たちが考えているよりもずっとたくましいかもしれない。

そんなふうに思う反面、このたくましさがあるのに、それを発揮させずに育てていこうとする現代社会には結構問題があるかもしれない。と、ボ〜ッと考えていました。

「福田さん、何、ぼ〜っとしてるんですか、行きますよ。」と、川上さんに促され、福田さんはハッと我に帰りました。

「そう、そうだね」と、福田さんは微笑むと、子供の最後尾に追い付こうとかけ出したのです。


トウモロコシの収穫は、まるで谷口君と堤光さんの掛け合い漫才でした。

谷口君の質問に光さん答えがいかにも田舎のおじさんという感じで、子供達もお腹を抱えて笑っています。


「光さん、ヒゲは何本あるんですか?」

「さあ、数えたことがな」

「数えてみましょうか?」

「うんや、今朝剃ってきたんだが、剃り残しがあるか?」

子供達は一瞬キョトンとします。

光さんは、自分の顎を一生懸命に撫でて、ヒゲを探しています。

すかさず谷口君が「そっちのヒゲじゃなくて、トウモロコシのヒゲ!」

と、突っ込みます。

子供達は話が見えて、どっと笑います。

「おう、そっちのヒゲか」

「そうですよ。光さんのヒゲの本数なんか誰も知りたがりませんよ。」

「そりゃあ、そうだわな」ここで子供達はまた爆笑です。

「トウモロコシのヒゲはな本数はわからないが、トウモロコシの粒とヒゲの数はいっしょなんしゃよ。」

「え~、本当なの?」

「そう、その一本一本がめしべなんだ」

子供達は、その話を、自然に食い入るように聞いています。

福田さんは谷口君はいい先生になるだろうなと思っていました。

その後、いよいよトウモロコシの収穫です。

子供達はもうお祭り騒ぎで、トウモロコシの畑の中に入っていきます。

体験的に一本日本取るのではなく、この畑のトウモロコシを全部収穫するのです。結構な作業になると思われます。

しかし福田さんと堤光さんんは事前の打ち合わせで、ただ、一二本取るのではなくて、農業の収穫作業というのがどのようなものかも体験させたいと思うのです・・・と、話をし、畑年体を収穫することに決めました。

大変ですが、達成感もあると思います。

しかしここでも子供達のパワーに圧倒されるうことになります。

こどっもたちは、お祭り騒ぎのまま、次から次へとトウモロコシを収穫し、残ったトウモロコシの茎を刈り取っていきます。

鎌など使ったことはないであろう、この子たちが、こんなにたくましく、刈り取り作業をするなどとは思っていませんでした。

堤さんが福田さんのところによってきて、子供もやるもんだな・・・と、微笑みました。福田さんも、大きく頷いて「びくりですね」

「これなら、来年もしてもらうかな。大助かりだで」

「ははは、そうですね」二人は大笑いしました。

そんなことには御構い無しで、子供達は次から次へと、収穫刈り取りを進めて行きました。

そして、予定よりも30分も早く綺麗に刈り取ってしまいました。


堤さんの軽トラは、トウモロコシで満載です。

子供達も手に手にトウモロコシを抱えています。

谷口君は「一人一本は持って行っていいと、堤さんんが言ってくれているから、お気に入りの一本を持ってください。他のはちゃんと堤さんのトラックに積みましょう。」

ワイワイ畑から出てくる子供達の中に。福田さんは、あかりちゃんを見つけました。