日本を、支える人材、けん引する人材、を育てる

未定稿小説『奥山村物語』

未定稿小説『奥山村物語』19

2020.4.11

都合9回のキャンプを、こちらで、お世話になろうと思っています。

いかがでしょう。

「いかがも何も、わからないのよ。何にも。わかっているのは、この夏休みはとっても素敵な時間を私たちは過ごさせてもらったって言うこと。そして、またあんな時間が過ごしたいと思っているということよ。」

「ですよね。でも私も始めてのことで、どうなるかわからないのです。」

「うんじゃあ、やってみるべ」

この省三さんの一言は重かったのです。


「まず、やってみるべ」これが、奥山村キャンプの合言葉になっていくのでした。

その後具体的な日程を決めることにしました。


田植えの時期


夏休みはどのキャンプを盆踊りやお祭りにぶつけるか。

そしてもうひとつ大きな課題が、貰い風呂から発展させて民泊をどうするかということでした。

そして、冬は、寒くないか?

いっそのこと冬はずっと民泊でもいいと言う話も出たりしました。

そして、年末年始をまたぐかどうか? だとしたらお年玉はどうするか?

話は尽きません。


しかし、まずは予定を決めました。

そして福田さんは、勉君の方に向くと、

「農業産品の直販を考えているんだが。」

と、新しい話題を切り出しました。

勉君を始め、みんなが少しぽかんとしています。

しかし、省三さんは、

「わしのスイカも入れてくれるんじゃろうな。」

と、すぐに反応しました。

それを聞いて、勉君が、

「ああ、もしかして、参加者の親御さんにですか?」

「はい、そうです、しかしこれは、農協に喧嘩を売ることになったりするかもしれないと思って少し躊躇しているのですが・・・。」

「そうですね、でも、一般へ売るのではなくて、あくまでも参加者へのサービスということで行うのであれば大丈夫でしょう。」

「そうか、そう考えてくれるとありがたいです。それから、少し、私にもマージンをいただきたいのです。子供のキャンプだけではなかなか生活が難しいかもしれないので、そちらでも少し稼ぎたいんです。」

「いいんじゃない。」

と節子さんは勉君をみる。

「正直、農協より少し高い値段で買い取ってもらったとしても、それに福田さんのマージン乗せても、市場価格より安いでしょう。きっと。福田さんがどれくらい乗せるかにもよりますが」

と言って、勉君はニヤリと笑いました。


通年の活動

月1回…都心で実施

キャンプは奥山村で…夏と冬に開催…2回


シーズン活動

夏休みキャンプ…2回

冬休みキャンプ…1回

春休みキャンプ…1回


話は盛り上がり、夏休みは3泊と言わず、もっと長い期間泊まった方が子供にはいいのではないかという意見も出ました。

夏休み中いればいいだろう。福田さんのいうふるさとなら、それもよしとしたほうがいいだろうという意見も出ました。

流石に夏休み中というのはちょっと難しいが、3泊のキャンプと5泊のキャンプを作ろうという折衷案を福田さんが提案して、みんなは納得したのでした。


その時福田さんの中にひとつのアイデアがひらめいていました。

「…そうだ、ふるさとは、いつでも子供達を待ち受けているものなのだ。いつ来ても、暖かく受け入れてくれる、それが故郷じゃないか。村の人たちのいうことは一理ある。

いつでも来ることができるふるさとキャンプみたいなものを考えてもいいかもしれない。日本にはまだ長いキャンプを実施しいているところはないだろうし、いつでも来られるキャンプなんてだれも考えたこともないんじゃないだろうか。

面白いかもしれない。

とはいえ、いまこんなことを村の人たちに行ったら大騒ぎになるし、しばらくあたためておくことにしよう。」


キャンプの打ち合わせを終えると、まだ日が高いにもかかわらず、キャンプの打ち合わせは飲み会へと、自然移行していきました。

福田さんは、勉君に

「勉君、今日、私の住む家も決めたいと思ってきたのだけれど。」

「大丈夫ですよ、もう何件か候補が出ています。それは村長が来てから。」

「そうなんだ、ありがたい。」

そこへ、省三さんが来て、「なに2人でゴチョゴチョ内緒話しとるんだ。さあ、飲め飲め。」

と、福田さんの肩をバンバン叩きます。そして横に座ると、

「ところで、三枝のボウズはどうじゃ。」

「はい、そのことで、ご相談したいことがあります。」

「うん、なんじゃ。」

省三さんは乗り出してきます。

そこで、福田さんは、三枝君が自転車で東京からこちいらに来たいと言っていることを話しました。

省三さんはしばらく黙って考えていましたが、顔を上げると

「やらしてみたらどうじゃ。ほぼ国道20号線じゃやろう。要所要所で、わしらが応援に出てやればなんとかなるじゃろう。」

「いいえ、そんなご迷惑をおかけするわけにはいきません。それにこれは、仕事とはならないと思うのです。」

「バカモン、孫がそんな冒険を考えとるんなら、爺ちゃんは、精一杯応援すると言っているんじゃ。仕事や商売で行っているんじゃない!」

「は、はい、申し訳ありません。」

省三さんの気迫の言葉に福田さんは思わず謝ってしまいました。

「お前は、ボウズと相談をしてコースやいつどこを通過するかの予想を立ててくれ、わしは、村のものと話をして、応援体制をととのえるから。」

「わかりました、ありがとうございます。」

「ただ、村の方々にお話しいただくとしても、この冒険はあくまで三枝君ひとりの冒険にさせてあげたいのです。彼の自信と、独立心をつけるための冒険にしてあげたいのです。ですから、他の子供達には知らせることなく進めたいのですが、それでよろしいいでしょうか?」

「うむ、承知だ。ボウズがことと次第によっては本気でうちに来るということも承知だ。お前も賛成じゃろう?」

と、省三さんは奥さんの方を振り向きます。

奥さんは

「子供たちも独立して二人きりの暮らしで、部屋が余ってるし、孫が来ていると思えば、楽しいですから。ぜひお願いしますよ。若い子がいれば私たちに何かあった時にも心強いしね。」

「ありがとうございます。 本人も真剣にそれを考えているようです。」

「うむ、わかった、で、いつごろ決行するつもりなんじゃ。」

「多分この秋です。11月のゴールデンウイークかと、学校の休みのこともありますから。」

「少し心配じゃな、笹子峠で雪にならなければいいが・・・」

「え、雪ですか?」

「うむ、あそこの雪は早い。」

省三さんは遠くをみつめて言いましいた。

福田さんは、思わず我に返りました。

そうだった。季節気候も考えないといけない。それに、パンクすることとか、交通事故をどう防ぐとか…省三さんの一言で、福田さんは三枝君の冒険をプログラムとして、事業として見つめることができるようになりました。

「省三さん、ありがとうございます。」

「うん?なんじゃい?」

「いいえ、いろいろありがとうございます。」

すると勉君が、

「転校の手続きとかも考えないといけませんね。」

「ああ、そうだね…その辺は私ではどうにもならない…勉君の方から、三枝さんと連絡とることも可能かな?」

「もちろんです。教育委員会と連携しますよ。」

村長が、汗を拭きながら現れました。

「遅いぞ…先に始めちょったぞ…。」

「どうぞどうぞ。福田さん、遠路ご苦労様ですじゃ。」

「いいえ、こちらこそたびたびありがとうございます。」

「皆さん話はどこまで進んだのかな?」

「来年のキャンプの予定などほぼ決まりました」と勉君が答えます。

「それは重畳。ここで私から、ビックプレゼントの発表がある。それも二つだ。」

「何をもったいぶっとるんじゃ。早う言え。」

と省三さん。

みんなも拍手をしてはやし立てます。

「いやいやご静粛に。まずひとつ目は、福田さんの住むうちじゃがな、昨年亡くなって空き家になっていた田中さんの家あるじゃろう。光さんのうちの北側の家じゃ。田中さんの息子さんが東京に住んでいてな、連絡を取ってみたんじゃ。以前貸しに出してもいいといっていたのでな。そしたら、二つ返事でOKじゃ。」

「家賃はいくらといってるの?」節子さんがすかさづ聞きます。

「家賃は、固定資産税分でいいそうだ。ただしリフォームとかはこちら持ちだが。」

「ならいいんじゃない?」

「いくらぐらいになるでしょうか?」

「月2万というところじゃ。」

「それは御の字です。」

「今から見に行くか。」

「いやいや、待ってくれ。もう一つ大切な話がある。」

と村長がみんなをなだめます。

「福田さんのするキャンプだが、いつまでも公民館というわけにはいかんと思う。」

「なぜじゃ~。」

「公民館は地域の人の福利厚生にかかわる事業を行うという大義名分があるんじゃがね。」

「そんなこまけーこといいじゃろうが。」

「いやいや、そこでだ、先日教育委員会と話をしてきたんじゃ。でな、先日発表になったじゃろう。来年度で廃校になる、奥山村小学校をキャンプの拠点にしてはどうかということじゃがね。」

「なるほど、それはいいことじゃがな。」

みんなも拍手喝采です。

「そこでだ、一応、活用委員会と言うものを立ち上げるでな、福田さんにもその委員になってもらい、そういう話を検討していくと言う手順になる。」

「ありがとうございます。そんな素敵なお話、夢のようです。」

と、福田さんが答えます。

「よし、決まりじゃ。そうと決まれば、あとは飲むぞ〜。」

と、村長はコップに手を伸ばします。

そこからはいつものように宴会です。


福田さんは宴会の最中も、三枝くんの自転車旅行の事が気になって仕方がありませんでした。

省三さんの雪は早い…の一言に引っかかっていたのです。

一刻も早く、三枝くんと話をして、計画を進めなくてはと、気が急いていました。


その晩は、なんと、公民館の大広間に1人で寝ると言うことになりました。

福田さんは1人になると、三枝くんの自転車旅行の為に必要なことを一生懸命書き出していました。


・全コースの決定・下見は必要か?

・宿泊はどこにするか?

・パンクとかはどうやって対応するか?

・事故が起きたときはどうやって救援するか?

・保険とかはどうするか?



翌朝、勉君が迎えに来ました。

「福田さん、うちに朝飯食べに来てください。」

「ありがとうございます。お言葉に甘えます。」

勉君のうちで、ご飯を食べた後、まず住まいとなる田中さん農地を見学に行きます。

すでに家の鍵は勉君に渡っていて、我が家のように入っていいます。