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未定稿小説『奥山村物語』

未定稿小説『奥山村物語』14

2020.4.6

やはり疲れているんだな。福田さんは、子供たちの顔を見回しながら思いました。

そして、スタッフの多くも、眠っているのを見て、よく頑張ってくれたな。と心の中でつぶやきました。



夕方、バスは東京に入りました。

もうすぐ、到着というとき谷口君がマイクを握りました。

「皆起きろ~」

「あ~もう東京だ~」

「もう着くの?」と、子供たちが口々に話始めます。涙はすっかり乾いています。そして、うちに帰る期待で、今までとはまた違う生き生きとした表情になっています。

やはりうちに帰るというのは子供にとって大切なことなのだな。

福田さんは改めて家庭に変えることの大切さを感じました。しかし、その中で一人だけ、あまり晴れやかな顔をしていない子がいました。三枝君です。

福田さんは見逃していませんでした。


谷口君が、「いいかい、バスを降りたら、お父さんお母さんのところに帰りたいだろうけど、荷物を持って、一度、みんなで並んで、お父さんお母さんにみんなで挨拶してから、解散になります。いいですね」

「は~い」

もう子供たちは谷口君を信用しきっているな。と、福田さんも彼の力を信じていました。


解散場所の公園に子供たちを集めると、家族の人たちが、周りを取り囲みます。

福田さんは子供たちに、4日間のことをちゃんとお父さんお母さんにお話しするようにということ、そして、覚えたこと、食事の支度や片付けも続けることなどを話しました。そしてご家族の方にも、あまり矢継ぎ早に、色々聞かずに、子供たちが話すのを待って、よく聞いてあげてほしいことをお願いしました。

そして4日間のことを書いたメモを用意してあるのでリーダーから受け取ってほしいことも付け加えました。


そしてみんなで、『ただいま~』という挨拶とともに、福田さんは解散を宣言しました。

しかし意外な光景が広がりました。

子ども達はお母さんやお父さんのところへかけていくと思いきや、リーダーの周りに集まって、別れを惜しんでします。

今野さんなどは、ボロボロ涙を流して子供たちを抱きしめています。

あかりちゃんも、今野さんにしがみついて、ワンワンと泣いています。

お母さんたちは、ちょっと戸惑い気味です。

中にはその光景を見て、もらい泣きをしているお母さんもいました。

それでもリーダーたちは、少しづつ、それぞれの親御さんに、一言二言話をしながらメモを渡していきました。

福田さんは、三枝君のお迎えのおばあちゃんのところに歩み寄りました。

そして、三枝君から少し離れたところに誘い、キャンプ中の出来事と、省三さんの気持ちなどをかいつまんでお話しました。

そして、遠慮なく相談してきてほしいということ、そして、省三さんのところに預けるのも一つの方法かもしれないと、福田さんも思っていることを付け加えました。

おばあちゃんは、「そうでしたか。おっしゃる通りです。たかひろ(三枝君)の父親は、たかひろをいつもぶつんです。母親もぶたれています。」

「もし何か、相談があるなら、気軽にご連絡ください。」

「ありがとうございます。」とおばあちゃんは深々と頭を下げました。


その後、スタッフたちは、反省会をすることにしました。

福田さんは、近くの貸会議室をとってあったのです。

その会議室に集まった、キャンプのスタッフを前に、開口一番福田さんが話しました。

「君たちのおかげで、このキャンプは大成功と言っていいでしょう。そして、今までと全く違うスタイルのキャンプだったのではないでしょうか?

そして、この反省会も、きっと今までとは全く違ったスタイルと思います。今までのキャンプなどの反省会は、居酒屋などでの打ち上げをイメージしていたかもしれません。心配しないでください。この後打ち上げに行きましょう。その会場も用意してあります。予約の時間は18時です。それまで約1時間半弱、今回のキャンプについての意見交換をしておきたいと思います。」

みんなは顔を見合わせて微笑みました。

やはり飲み会も期待していたようです。

福田さんは続けます。

「この意見交換は、大きく分けて、二つです。

ひとつは、子供たちここのことについて。

ふたつめは運営について、次回開催する時にこうしたらいいという建設的なものをお願いします。


そして、最後に、思いで会の開催の確認をします。


ひとつ目の子どものことですが、私は一回ぽっきりの子どもとの出会いではいけないと考えています。ですから、キャンプでの情報を蓄積していきたいのです。子供の個人カルテのようなものを作りたいと思っています。

皆さんにはご迷惑でしょうが、今後、数日の間に、そのカルテに気が付いたことを書き留めておいてもらえればと思います。

今日は、みんなで共有しておいた方がいいと思うことを話してください。」


平野君をはじめとして、スタッフの面々は、キャンプ中に使っていたノートを取り出しました。

色々な子どもの様子が話されましたが、特に話題になった子はやはり三枝君でした。

平野君、福野君、そして福田さんが、それぞれ、キャンプ中での様子や、知りえた話を共有しました。そして、解散の時のおばあさんの話も福田さんは、みんなに包み隠さづ話しました。

そして、「この話は、相当デリケートな話だと思う。だから、みんなは、決して他言しないでほしい。どこでどう、話がご家族にまで漏れてしまうかわからないから。」

「わかりました。」

皆大きくうなづきました。

その中で、福野君が、

「もしおばあさんから相談があったらどうなさいますか?」

「うん。何ができるかわからないが、誠心誠意相談に乗って、彼を助けてあげられるよう考えたいと思う。」

「そこまでする責任があるんでしょうか? 僕たちに。それに、僕たちにそのノウハウはないと思うのですが。」

「確かに、今回のキャンプだけを考えればそれは、必要以上の介入に思えるかもしれない。でも私は、子供の教育機関としてのキャンプを作り上げたいのです。教育といっても、学校教育じゃない、地域社会の教育だよ。地域で子供の成長を、ちゃんと見守っていってあげる。そこに専門的知識とか、視覚とかは関係ないんじゃないかな? この子を何とかしてあげたいという思いが大切だと思うんだ。」

「でも、彼の生活している地域と、私たちの生活している地域は、みんなバラバラですよね。」

「そう、今はね。しかし私は、奥山村を故郷とするあそこの地域で子供たちのことを考える教育を考えたいんだ。三枝君は今住んでいつ地域の子ではなくて…極端に言うと、奥山村から今住んでいるところに移っていった子として、奥山村の皆で心配してあげられないかなと思っているんだ。省三さんも節子さんも、みんなと同じように三枝君のことを心配してくれていた…どうかな?」

谷口君が

「すごい発想ですね。子供のふるさとづくりで、そこまでしようなんて…おい、福野、そうだろう?」

「確かに、そんなこと、考えもしなかった。まいったな~」


「時間もあるし、この話はこれぐらいにしようか。次は次回に向けての提案とか改善点を聞かせてくれないか?」

「次回というのは来年ですか?」と、今野さんがききます。

「いい質問ですね どうしましょう?」

「えっ…」

と、今野さんは絶句し、一同が爆笑です。

平野君が、「次回いつするかとか、考えていないのですか?」と笑いながら聞きます。

「ああ、初めは、来年の夏にと思っていたんだが、ちょっと欲が出てね、もう少しはやめて、何かできないかなと今思っているんだよ。どうかな?」

「まあ、とりあえずは、来年の夏同じようなキャンプをするとしての改善点を話しておきましょうか」と平野君がまとめてくれた。

「そうしよう。どうかな」

伊藤さんが、「写真の撮り方が難しかったです。何かテーマというか、目的がないと、なにをどう、どのくらいとっていいのか、すごい迷いながら映していました。」

「テーマというと?」と福田さんがきき返します。

「たとええば…思い出会で、子供たちの楽しそうな様子を張り出して、写真を買ってもらうとか。そのために撮るというのも一つのテーマですよね。ほかには、ひたすら子供の笑顔をとるとか。スタッフと子供のやり取りの様子をとるのもいいかなと思ったり。」

「なるほど~。研究の余地ありだね。でも次回は、とりあえず、記録スタッフは二人にしよう。一人は思いで会での販売写真を撮る。これは親御さんの欲求を満足させるためにも必要だろう。ちょっとした稼ぎになるかもしれないしね。もう一人は、キャンプのテーマにそった写真を撮るというのでどうだろうか?」

平野君が、「わかりました、次回は記録写真のスタッフは二人にしましょう。」

「よし、ほかには?」

思い切って民泊をしてもいいのではという意見も出ましたが、これは福田さんが、もう少し様子を見ようということになりました。

それは、お土産事件があったからです。あんなふうにお願いした以上のことをしてしまう状況があると、結果、ご接待の競争になりかねない。だから、少しこのような受け入れになれて、興奮状態の鎮静化を図ってから、民泊をしたいという話でした。

皆大いに納得です。

そこではお土産事件の話もひとしきり盛り上がりました。

その中でも、あかりちゃんのリックサックの半分はトウモロコシだったこと、そして、あかりちゃんはすっかりトウモロコシを作りにまた行くと意気込んでいたことなどで、大いに盛り上がりました。


「ほかにはどうだろう」

川遊びでの安全確保の問題や、最後に村長さんに挨拶をしなかったことなどが話題に出ました。

福田さんは、「村長さんへのあいさつはすっかり忘れっていたなあ。失敗だ。ご挨拶に行ったときにお詫びしないといけないな。」

平野君も大きくうなずきます。

「まずは明日にでも電話を入れておこう。」


「最後は、思いで会のことですが…」と福田さんが話を始めました。

「3か月後の日曜日、場所はこの会議室を予定しています。」

「なるほど、どうも広い部屋での反省会だなと思ったら、会場の下見も兼ねていたんですね。」

「そういうこと、ここでいいよね。」

「はい」

みんながうなづきます。

進め方は、谷口君考えてくれるかな。

「はい」

掲示とか会場設営、受け付けは平野君、それに写真のことがあるから伊藤さんも協力してもらっていいかな?

ふたりは、ハイとうなづきます。


そのための打ち合わせは必要に応じて皆に連絡しますが、基本は、今の3人を私とで月一度打合せする。

皆は直前に一度打合せするということでいいだろうか。

今野さんが、

「思い出会は子供たちと、親を分ける時間は考えていないのですか?」

「そうだね、今のところは考えていないが」

「先ほどの、三枝君のことなど考えると、個別に相談したいと思う親御さんもいるのではないでしょうか。そんなときのために、終了後、個別に相談に乗ることもできます見たいな風にして、その間は子供を別室で預かるなんて言うこともあってもいいかもしれないのではないでしょうか。」

「そうだね、個別も、あるかもしれないし、親御さんから感想を聞くこともいいかもしれないから、子供と親が別の時間も考えよう。谷口君いいかな?」

「はい、わかりました。」

平野君がすぐに、「事務室に行ってその日。他の部屋が空いているか聞いてきます。」と言って立ち上がりました。

ほどなくして、

「空いていました。仮予約してきちゃいました。」

「結構」と福田さんは満足げです。

では、反省会はここまでにしましょう。と終了し、福田さんが、

「皆さん本当にお疲れさまでした、では、打ち上げに行くとしようか。」

「は~い!」とみんな、一気に立ち上がりました。


近くの居酒屋に繰り出した面々は、ビールやジュールで、カンパ~イと、声を合わせました。そこから後は、もう、福田さんはもみくちゃといってもいいかもしれません。

次回はいつするの。

またスタッフをしたい。と、福田さんに皆詰め寄ってきます。

大いに盛り上がった、打ち上げでした。