未定稿小説『奥山村物語』63
2021.2.11
三枝君は先に歩き出していた、あかりちゃんたちを颯爽と追い抜くと、「また明日〜」とあいさつを残して走り去りました。
あかりちゃんが福田さんに「私もこの村で暮らしたいな・・・」とポツリとつぶやきました。
福田さんは少し考えてから、「そうだね、いつかそうなるといいね」と答えました。
学校に帰ると、三々五々子ども達が戻ってきていました。
リーダーと帰ってくるもの、ご家族に軽トラで送ってきてもらうもの、いろいろです。
帰ってきたものから、晩ご飯の支度に取りかかっていました。
晩ご飯は冷やし中華です。
きゅうりを刻んだり、カニカマをほぐしたり、卵を焼いて刻んだり、麺を茹でるお湯を大きなお鍋に沸かしたり、グラウンドでそれぞれ準備して行きます。
お湯が沸く頃にはみんな帰ってきました。
麺を大きなお鍋に投入して、竹の棒で、グルグルかきまぜます。豪快な料理です。
茹で上がると、これまた大きなボールにどんどん移して、冷やして、お皿に盛って、具材を載せて・・・流れ作業です。
みんなの机に、冷やし中華が並びました。
声を揃えて、いただきますを言った途端、つむろくが、隣の男の子の冷やし中華のお皿から、
「俺の冷やし中にはきゅうりがない・・・これ頂戴」と言って、きゅうりを摘み上げると、パクリと食べてしまったのです。
川上さんは、大慌ててつむろくのところに行くと、「つむろく、きゅうり食べちゃダメでしょう?」
「え?」
つむろくはぽかんとしています。
「え、じゃないわよ、あんた、きゅうり食べたら、アレルギー出るんでしょう?」
「そんなこと知らないよ。」
「アレルギーの薬とか預かってないしな・・・」
平野くんも近づいてきて、
「まいったな・・・具合悪くなったりしてないかい?」と尋ねます。
つむろくは、何のことかわからないと言った様子です。
「とにかく、お母さんに電話してみる。しばらく様子見ていてくれるか。」
と、平野くんが川上さんに頼みました。
川上さんは、「わかりました」と、つむろくの横に座りました。
「どこも具合悪くない?」と、つむろくに声をかけます。
つむろくは何事もなかったかのように、「大丈夫だよ。それよか、もう、冷やし中華食べてもいい?」と、尋ねるのでした。
川上さんは、苦笑いすると、いいわよ。と、答えました。
平野くんはスタッフルームに戻ると、つむろくのお母さんに電話を入れました・・・
しばらくして、平野くんはつむろくと川上さんのところに戻ってきて、微笑みました。
「大丈夫だ」
川上さんは怪訝な顔をして、「え、大丈夫なんですか?」
「ああ、詳しいことは後で話すけれど、とりあえずはきゅうり食べても大丈夫だ。」
「わかりました」