未定稿小説『奥山村物語』66
2021.3.4
お風呂から出たあかりちゃんは、恵子さんに頭を拭いてもらいながら、尋ねました。
「ねえ、お母さんて呼んでもいい?奥山村のお母さん。光さんはお父さんて呼んでいいかな?」
「あらまあ、嬉しい、もちろんいいわよ~。でも、おばあちゃんじゃなくて、お母さんでいいの?」
「うん、お母さん」
あかりちゃんは嬉しそうにうなずきました。
ケケも、「あたしもお母さんて呼ぶ~」
「はいはい、お母さんですよ」恵子さんも嬉しそうです。
「では、お母さんのいうことは聞いてくださいね。」
「は~い」二人は声を揃えます。
「では、お部屋に行って、ふたりで助け合って、お布団を敷いてください。」
「は~い」と、あかりちゃんが答えます。
しかし、ケケが、「あたし、布団って敷いたことない…うちはベットだから~」
「大丈夫、あたしが教えてあげる。あたしは毎日お布団敷いてるから。」と、あかりちゃんが微笑みます。
「うん、じゃあ、一緒にね」
「いいわね、二人で頑張ってね。」と恵子さんが微笑みました。
その晩、あかりちゃんとケケは二人で楽しく、一緒に布団を敷き、お布団に入りました。
昼間の疲れが出たのか、あっという間に二人は眠りについてしまいました。
茶の間では、光さんと恵子さんがお茶を飲んでいました。
「いい子たちね」と恵子さんが微笑みます。
「ああ、あかりちゃんはもちろんだが、ケケもまるで孫のようだな。」
「フフフ、違うわよ、子どもよ」
「子どもにしちゃあ、小さすぎるだろう」
「さっきお風呂でね、二人に、お母さんて呼んでいいかって聞かれたのよ」
「へ~お母さんか…」
「あなたのことはお父さんと呼びたいそうよ」
「こりゃあ大変だな、二人が成人するとなると、あと10年頑張らないといけないな…80過ぎになるそ」
「そうね、でも、励みになるんじゃない?」
「そうかもしれんな。あの子たちを励みにもう少し頑張れるかもしれんな」
「ええ、そうですね。気持ちが若返るようですよ。ちょっとお洒落しちゃおうかしら」
「ハハハ、いいな」
「あなたも、もう少し若作りしないとね。」
「俺もか~?」
「そうですよ。あの子たちに、嫌われないようにね」
光さんはにやにやしていました。
翌日も二人は元気に、トウモロコシの収穫をお手伝いしました。
恵子さんは少し早めにお家に帰って、収穫したトウモロコシを大きなお鍋で茹でておいてくれました。
お昼を食べて、小学校に帰る時に、その茹でたトウモロコシを山盛り持たせてくれたのです。
「頑張ってくれたから、これはご褒美、みんなでおやつに食べなさい」
「ありがとうございます~」と、二人が声を揃えます。