未定稿小説『奥山村物語』34
2020.7.4
メモしたり、覚えたりしていますが、だんだんみんな帰りの道が不確かになる気がします。
みんなで相談しながら、地図を作り、時には、チルチルミチルのように、目印としてに垣根の枝に、持っていた紐を結んだりしていきます。
しかし、棒を倒すときになると、『こっちか~』…とか、『お、こっちはいいんじゃない』とか、意味もなく、その先に何かがある期待感に胸を膨らませたり、ドキドキしたりしながら進んでいくのでした。
朝の8時からそんなハイキングを2時間続け、10時になったときにリーダーの携帯電話が鳴ります。
谷口君からです。
その電話が、奥山小学校へ帰る合図でした。
そこからが、思ったよりも大変でした。
メモや、目印を頼りに歩くのですが…前を見てメモしてきたことは、実はあまり役にたったないのでした。
帰り道は、来るときにしたら、後ろ向きの風景を見る形になるのでした。
ですから、来るときに見えた建物の壁にある看板は、帰りは、何にも見えません。
電信柱の表示も、メモしたものは、帰りは裏側になっていますから、いちいち回り込んで確かめないといけません。
そんな風にして、確かめて、確かめてしながら戻るものですから、来るときと同じほどの時間がかかってしまいました。
何とか、どのグループもお昼前には、戻ってくることができました。
みんな、口々に「面白かった~」「けど帰りがあんな難しいとは思わなかった」「でも、みんなで一生懸命助け合っちゃいました」と、色々な声が自然に上がってきました。
谷口君は、用意してあったお弁当を配りながら、
「食事しながら、ちょっとこのハイキングのこと、みんなで話してみてください。それぞれの人が、グループの中でどんな存在だったかを話してみてください。」
「でも、おまえが悪いとか、私はダメだったとか、そういう、反省会のようなことはしないでください。それぞれの人がどんなふうに役に立ち、機能したかを話してください。」
「はい」
みんなは返事をすると、それぞれ、車座になり食事をしながら、話を始めました。
福田さんは、谷口君に聞きました。
「この後、どうまとめて行くんだい? あまり時間がないと思うのだけれど。」
「いいんです、特に発表したり、記録にしなくても、本人たちが自分のことや仲間のことを分かり合えるようになればいいと思うのです。こういうことを繰り返していくことで、仲間の絆きずなや、このチームの中での、自分の役割がわかっていくと思うんです。」
「なるほど、先を見越してのトレーニングなんだね」
「まあ、そんなもんです」
そんな風に、3回のトレーニングも無事に終了しました。