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未定稿小説『奥山村物語』

未定稿小説『奥山村物語』67

2021.3.11

光さんの軽トラックの荷台に乗り込んだ二人は、たくさんの茹でたての温かなトウモロコシを抱えます。

二人は満面の笑みを浮かべていました。

もう、自分はトウモロコシ農家とでも言わんばかりです。


福田さんや、その他のスタッフがグラウンドで待ち構えています。

トラックが止まると、あかりちゃんとケケは、荷台に立ち上がり、トウモロコシを高々と持ち上げて、みせます。

「お帰り~」と、福田さんは満面の笑みを浮かべます。

谷口君も、平野君も同様に手を振ります。

福田さんはトラックから降りてくる、光さんに深々と頭を下げました。

「ありがとうございました。何か不都合はありませんでしたでしょうか?」

「いやいや、楽しかったよ。それに一生懸命頑張ったぞ…二人とも」

「そうですか、それはよかったです。」

「ほかの連中はどんな感じだった?」

「はい、大方の子どもが帰ってきましたが、皆さん、光さんと同じような反応で、上々かと思います。」

「そ~か、そりゃあよかった。」

「本当にありがとうございます。それから、以前もお願いしましたが、今夜キャンプファイヤーをしますので、7時ごろに、またお越しいただけますか?」

「うむ、家内と一緒にお邪魔するよ。二人とも、約束したからな。」

「そうでしたか、よろしくお願いします。」


そんな話を福田さんと光さんがしている間に、二人は、谷口君に、次から次へと自慢話を矢継ぎ早に続けていました。

そしてたくさんのトウモロコシを三人で降ろしていきました。


荷物を降ろしていくと、小学校の玄関には、キャベツやら、ナスやらピーマンが山盛りに置いてあります。

皆、収穫して持ってきたものでした。


その晩の夕食は、キャンプファイヤーということで、みんなでお鍋をつつくことになっています。

村の人たちもご招待しての鍋パーティーです。

子ども達は、もらってきた野菜をそれぞれに自慢しながらお鍋に入れていきます。

そんな準備をしながら、あかりちゃんとケケの持ってきたトウモロコシをほおばります。

「おいしいね~。このトウモロコシ」

と、みんなが、口々に褒めてくれます。

あかりちゃんもケケも、嬉しくてたまりません。

他の子ども達もみんなこぼれんばかりの笑顔です。

そんな準備の最中、福田さんのところにそっと近づいてくる人影がありました。

「こんにちは」

福田さんが少し驚いて振り返ると、そこには三枝君がいました。

「お、色々ありがとうね。」

「いえ、僕は何も…」

「で、なに?」

「じいちゃんが手伝ってこいって」

「じいちゃん? 省三さんがかい?」

「はい、そうです」

省三さんのことはおじいちゃんになったか。と、福田さんは、嬉しく思いました。もうすっかり家族になったな。

「ありがとう、じゃ、谷口君のところで、手伝ってくれるかい?」

「はい、わかりました」

三枝君が、人の輪の中にいる谷口君のところに進んでいくと、それを見つけた、あかりちゃんやテル君が、「あ~ひろしくんだ~」とみんなが、三枝君を取り囲みます。

三枝君の、はにかみがちな雰囲気は相変わらずですが、そこには、昨年の暗い雰囲気はもうありませんでした。

満面のほほ笑みをたたえて、キャンプ仲間と楽しげに話しています。