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未定稿小説『奥山村物語』

未定稿小説『奥山村物語』20

2020.4.12

翌朝、勉君が迎えに来ました。

「福田さん、うちに朝飯食べに来てください。」

「ありがとうございます。お言葉に甘えます。」

勉君のうちで、ご飯を食べた後、まず、住まいとなる田中さんの農地を見学に行きます。

すでに家の鍵は勉君に渡っていて、我が家のように入っています。


地区の一番外れにはなるのですが、平屋ながら、和室が4部屋もあるお家でした。

縁側こそないものの、掃き出しの大きな窓のある廊下があり、バルコニーのある部屋もあります。バルコニーからは、堤光さんのお家が見えます。

キッチンは8畳もあり、ひとりなら、ここで食事も十分です。

すぐにでも住めそうなお家です。

福田さんは、即答で


「ここでお世話になります。」


と、勉君に頭を下げました。



「即決ですね。」

「はい、こういうことは勢いと思っていますから。」

「わかりました。すぐに手続きに入りますね。じゃあ、その勢いで奥山小学校を見に行きましょうか。」

その小学校は福田さんが住まう家から、西に小さな谷を渡った丘の上にありました。

勉君と歩いていきました。

その谷の底を流れる小さな川を渡るとき、勉君が


「この川は、夏前には蛍が飛ぶんですよ。」

「えっ、そうなの? すごい! 見て見たいな~。」

「住むのですから見れますよ。」


と微笑みます。

「そうだね、楽しみだな~。蛍を見に来るツアーなんかもいいね。」

「わざわざですか?」

「そっか、君たちは毎年当たり前のように見ることができるから、特別には思わないかもしれないけど、東京の人にとっては蛍が見られるというのは相当特別な体験だと思うよ。」

「なるほどね~。」

勉君は何か不思議だな~という表情でした。

そんな話をしながら歩いていると、上の方に学校の屋根が見えてきました。

坂を上ると奥山学校の全容が見えてきました。


素敵な二階建ての小学校です。

「おい、すごいじゃないか。こんな素敵な学校があったなんて…気が付かなかったな~。」

「まだ子供がいますので、全部見るということはできませんが、空いている教室等は見ることができるようになっていますから、いきましょう。」

そうは言っても子供たちが使う教室は二つだけで、他はみな空いていました。

体育館も、理科室や、家庭科室、図書室もとても充実していました。

空き教室が4つもあります。

それに、食堂、厨房まであります。


「ここが本当に廃校になっちゃうの? もったいないね。」

「ええ、そうなんです。」

勉君もちょっと暗い顔です。

「建設当時は、ここに、他の小学校が統合されるはずだったんですがね。」

「へえ。それがそうして?」

「まあ、色々ありまして。」

「なんだよ、はぎれがわるいな。」

「まあそのへんは…。」

「わかった、とにかくここを使わせていただけるなら、願ったりかなったりです。」


家に戻った二人は車に乗り役場で、村長に会い、きちんと申し出をお受けすることを伝えて、福田さんは東京に戻りました。