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モモの部屋のカレンダー

未定稿小説『奥山村物語』

未定稿小説『奥山村物語』61

2021.1.25

しばらくすると、三枝君が立ち上がり、背中に小籠を背負ってもぎ始めます。と、トウモロコシ畑の中に消えて行きました。

光さんが、「働き者だな」と、微笑むと「どらわしらもいくか。2人は大丈夫か?」と、聞きます。2人は、うん!と大きく頷くと立ち上がりました。

そして、また籠を持って、三枝君の後を追ってトウモロコシ畑の中に入って行きました。


しかし2人の収穫のペースは一向に上がりません。それでも、光さんと、奥さんと、そして三枝君の3人で、軽トラックはどんどんトウモロコシで山盛りになって行きます。

あかりちゃんと、ケケはいつの間にか、トラックに山盛りになったトウモロコシをこぼれ落ちないように整理する係になっていました。踏み台に乗って、軽トラックの荷台にあるトウモロコシを綺麗に並べて積み上げていくのです。

2人はすごいね、たくさんあるねと、言い合います。時々現れる虫には、きゃ〜と悲鳴を上げながらも、頑張っています。


山裾に陽が傾き始めた頃、光さんが

「今日は少し早いが、これぐらいにしておこう。うちに戻るが・・・そうか、軽トラに乗れなくなっちまったな。」

「僕が2人と一緒に歩いて行きますから、光さんたちは先に行ってください」と三枝君がいいます。

「そうだな、じゃあ、ひろし、よろしく頼むな。」

あかりちゃんはそういう三枝君を眩しげに見上げています。

光さんと奥さんは軽トラで先に走り出しました。

三枝君は、「さ、行こうか」と、2人を促します。

ケケは「え〜歩いていくの」と少し不満顔です。

「大丈夫だよすぐだから。」と、三枝君が励まします。

3人は畑の道を、歩き始めました。三枝君は自転車を引いています。

あかりちゃんが歩きながら、「ねえ、村の暮らしは楽しい?」と、三枝君に聞きます。

「ああ、楽しい。体がきついこともあるけど、それは、一生懸命頑張ったって証拠みたいなところもあって、なんか嬉しいんだ。」

「なんか、体大きくなったよね。」

「ああ、身長も伸びたし、体重も増えた。力もついたような気がする」

「凄いな〜、あかりもここで暮らしたいな」

「あかりちゃんは東京に、ちゃんとした、お父さんやお母さんがいて、楽しい暮らしがあるんだから、いいじゃないか。」

「ちゃんとした暮らしが東京にあったら、こっちにきちゃいけないの?」

「う〜ん、それはわからない。お父さんやお母さんと相談してそして福田さんに話してみたら?」

「わかった、そうする。」

ケケは、怪訝そうに2人の話を聞いていました。