未定稿小説『奥山村物語』22
2020.4.14
夕食の後、福田さんは勉君と2人で、そぞろ歩いて、光さんの家の裏にある、福田さんの新居に向かいました。
玄関の鍵を開け、電気のスイッチを入れて、入っていくと、驚きました
もういつでも住めるほどに家具や食器がそろっているのです。
「こりゃあ、すごいな。本当に家具食器付きのうちになっちゃてる。お~電子レンジに、冷蔵庫まであるし、炊飯器まであるじゃないか。」
「みんなお古ですけどね。いいですか?」
「もちろんだよ。みんなちゃんと動くんだろう? 動かなきゃ困るけどね。」
「はい、そりゃあ大丈夫でしょう。確かめてはいませんが、動かないものを持ってくるほどうちの村のもんは悪くないですよ」
「もちろん」
2人は顔を見合わせて大笑いしました。
翌朝、谷口君と連絡を取り合い、時間と場所の確認をしました。時間が少しあるので、新居に行って、掃除をすることにしました。
節子さんに、掃除機や雑巾、バケツなどを借りて、新居に向かいました。
午前中、福田さんは夢中で掃除をして、たっぷりと汗をかきました。
そして、昼には、省三さんのお宅に伺いました。
奥さんと3人で楽しい昼食を取っていると、勉君がきました。
「私も、ご一緒して出迎えに行くように村長に言いつかりまして」
「そうなんだ。ありがとう。」
「勉、昼飯は食ったか?」
省三さんの奥さんは、すでに立ち上がって、勉君のご飯をよそい始めています。
「すみません、ちょっと期待してきちゃいました。」
「ほれ、上がって、座れ。」
勉君は縁側から上がりこんできて座り、奥さんから山盛りのご飯茶碗を受け取ります。
「いただきます!」
そうして、勉君も、昼食の輪に加わりました。
福田さんは、省三さんと勉君に、三枝君の今日の予定が、今朝、谷口君から入ったことを伝えました。
谷口君は、結局つかづ離れずで、全ての行程をフォローしてくれたのです。
そんな谷口君の連絡によると、国道20号線を直進し、奥山村の奥山駅に上る道から駅前を通って、公民館に向かうということでした。
坂は、急でも、短い方がいいということです。
確かに、山崎から奥山村に向かえば、なだらかな登り坂がずっと続きます。
車で走っていると、その辺は感じないのですが、自転車ではやはりつらいのでしょう。
的確な判断だと、福田君は思うとともに、この判断は谷口君のアドバイスなのか、三枝君の自分の判断なのか、興味がありました。
「だとすると、出迎えはどうする」と省三さんが聞いてきました。
福田さんは我に返り、「そうですね、予定通り山崎に行きましょう。
そのあとは、谷口君と一緒に国道20号線を伴走してくればいいでしょう。」
「よっしゃ、わかった、じゃあ、行くぞ」
「え!?まだ早いですよ」と福田さんが慌てます。
出発の予定時間より、30分余り早いのです。
「途中何があるかわからんじゃろう。それに洋が速く走って、わしらが間に合わなかったらかわいそうじゃろう。」
「そうですね、わかりました。」
「えっ、ちょっと待ってくださいもうすぐ食べ終わりますから」と、勉君が、大慌てで、ご飯に味噌汁をかけて、かき込んでいます。
「勉君大丈夫だよ、準備している間に食べたらいいよ。君はあとは車に乗るだけでいいんだろう。」
「はい」
「しかし、勉君の車と、省三さんの軽トラ二台で行くと、行列が長くなるな…勉君、君の車に、省三さんと私を載せてもらっていくというのでもいいかな?」
「もちろんです、もともとその予定で来たんですよ」
大慌てでご飯をかき込んだ勉君が車を運転して、3人は出発しました。