未定稿小説『奥山村物語』31
2020.6.11
年が明けてしばらくしたころに出来上がったチラシを、参加を希望してくれた方々に、決まった年間の事業計画と、申し込み用紙と合わせてお送りしました。
この発送作業も、陽子さんの会議室で行いました。
「喫茶店ではこんなことはできないものな~本当に助かった。」
と福田さんは、ことあるごとに陽子さんにお礼を言っていました。
その後も、参加者は、少しずつ増えていきました。
参加者はほぼ定員です。
福田さんも、ほかの人たちも、予想外の反響にびっくりやら嬉しいやらです。
それと並行して、スタッフの研修も始めました。
夏休みに手伝ってくれたメンバーを中心に、その友達や後輩に声をかけてもらいました。
スタッフのトレーニングとはいえ、30人近くの人が集まりました。
福田さんの講義の時は、夜に社会教育会館の研修室を借りて、2時間ほど話をしました。
実技は、奥山駅に集合して、みんなで歩いて、奥山小学校に向かいます。
そこで合宿をします。
合宿をしながら、奥山小学校の掃除や、整備も進めていきます。
畳の寄付や布団なども寄付が相次ぎました。
福田さんも、村の皆さんにお願いして、使っていないお茶わんや、お皿、座布団、布団などの寄付を呼び掛けたのです。
ミーティングのなかで、福田さんはこんな話をしました。
谷口君が「合宿が迫っているんですが、キャンプ用品を買わないといけません。鍋かまや、食器も必要でしょう」
「その件なんだけど、まず、基本テント生活は、今年はあまり考えないで行こうと思うんだ。そのわけはね、まず、子どもたちが、テント生活に好奇心がわく割合と、苦痛というか、不安に思う割合とが、好奇心の方が勝つまで待ちたいんだ。それも、一番不安に思っている子の好奇心が勝るようになるまで。その好奇心がわくように、奥山小学校で泊まって、たきつけたいんだ。それに故郷は、テントじゃなくて、畳に布団だと思うんだよね。」
「だとしたら…それらのものをそろえるんですか?」
「東京の参加者と、奥山村の人たちに寄付を募る。余っているというか、使っていない、お茶わんとかお皿とか、座布団、布団を寄付してもらうんだ」
「え…茶わん碗ですか?」
「そう、茶わん。割れちゃうかもしれない。子供たちに、洗ってもらったりすればね。でも、それが生活だろう? キャンプの中で、お茶わん洗ったり、布団敷いたりする故郷の体験をしてもらいたいんだ。お茶わん買ったら高くつく、それ割られたら、あ~っ!て思うけど、寄付してもらえば、それほどショックじゃないだろう…まあ、大事にしないといけないけどね。そんな寄付をずっとお願いし続けることで、参加者の家族や地域の人たちに、故郷を作ろうとしていることを、訴え続けることができると思うんだ。お茶わんとかは、きっと結婚式の引き出物とかで使っていないものがあると思うんだ。どうだろう?」
「なるほど、経費削減と、思いの表明の一石二鳥ですね」
「そういうわけです。もちろん、形が揃わないとか、不便なところはたくさんあると思います。そういうところは、スタッフのみんなの創意工夫で乗り越えて欲しいのです」
そんなお話をすると、陽子さんから節子さんに、節子さんから勉君へと伝わり、村中に伝わりました。すると、あっという間にいろいろなものが集まってきたというわけです。
畳などは、畳屋さんから、交換した畳の程度のいいものの寄付がありました。
また、茶わん碗や、布団などは各家庭から少しずつ集まってきました。
皆こんなもので良いのかな〜と言いながら持ち寄ってくれたそうです。
それに、勉君が一人ずつ、大丈夫ですよと対応してくれたのです。
結果、奥山小学校には沢山の布団やお茶わんが積み上げられたのでした。