未定稿小説『奥山村物語』64
2021.2.18
夜のスタッフミーティングは、大爆笑に包まれました。
もちろんつむろく君のことでです。
平野君がことの顛末を説明してくれました。
「つむろく君の、申し込みの時の調査票には、きゅうりアレルギーと書いてありました。ですからもちろん、冷やし中華にもきゅうりはのせずに出しました。しかし、彼は、となりの子のきゅうりを取って食べてしまったのです。しかし、本人に自覚は全くなく、薬も預かっていませんでした。そこで、お母さんに電話して見たなら、口ごもりつつも、話してくれたのですが・・・お母さんご自身がきゅうり嫌いで、あまりきゅうりをつむろく君に食べさせていないことから、つむろく君もあまり好きではないだろうと、きゅうりアレルギーと書いてしまったそうです。本人は、全くアレルギーとかではないそうです。」
「なんてこと、こっちはびっくりして、大慌てだったのに」
「まあ、お母さんも平謝りでしたから、勘弁してあげましょう。つむろく自身には何の罪もないわけですし。」
と、言うわけで、ミーティングは笑いに包まれたのでした。
福田さんは、お母さんが偏食で、子どもは知らない間に偏食にされていくということもあるのかも知れないなと、思っていました。
翌日の朝も、子どもたちは、各々の畑に向かいます。
しかし今日は、お泊りのための着替えや、洗面用具を入れた小さなバックを皆担いでいます。
お伺いするお家は、昨日と同じおうちです。
あかりちゃんとケケも、嬉々としています。
福田さんと川上さんが、それを見て・・・「去年の夏、ホームシックで君の手をわずらわせたとはとても思えませんね。」と微笑みながらいうと、
「本当に、子どもって、すごいですね、一年で、もうすっかりお姉ちゃんですよ」
「経験というのは、そうやって、人を成長させて行くんだね。」
「はい」
「でも、成長が早いという事は、吸収が早いということでもある。私たちがあの子たちに手渡す体験の良し悪しで、それを吸収した子どもの成長が鈍ったり、よくない結果を招くことも考えられるという事だ。」
「なるほど、そうですね、いつも、いい体験を手渡してあげられるように頑張らないといけませんね」
「そう、その通りだよ」
そんな話をしているうちに、2人は光さんの運転する軽トラの荷台にちょこんと並んで座って、手を振りながら走り去っていきました。