日本を、支える人材、けん引する人材、を育てる

Ⅴ 研究提言

「理論×実践」、より良い社会を目指すために必要であるキーワードであると認識しながらも、未だその融合がなされていないように感じています。「社会に役立つ研究」を問い続けながら、「理論×実践」の融合を体現できるよう進めていきます。

SPS報告会における研究報告

2023.1.31

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
 大学では、卒業研究の提出も終わり、ここから大学はスキー実習などの実習シーズンを迎え、3月には卒業式といった怒涛のウィンターシーズンを迎えます。楽しんでいきたいですね!
 さて、1月は25日(水)に2022年度のSPS事業報告会が実施され、その中で夏に実施した調査の報告をさせて頂きました。
SPS事業を、参加者、運営者、持続可能性の3つの観点で見ると、様々な支援が必要である状況があります。
 ・「参加者の支援」…参加に関わるサポート、アウトリーチさせる方法、金銭的援助の方法など
 ・「運営者の支援」…運営に関わる人材の確保、トラブルへの対処、対象者理解など
 ・「持続可能な事業とするための支援」…スポンサーの獲得、寄付システムの構築、社会的認知の向上など
 これらの支援をより効果的かつ効率的に行うための、一つのアプローチとして研究プロジェクトが始まりました。研究プロジェクトとして、①効果があるのか、②適切に届けられているのか、③どのように普及するのか、の3つの問いを立て、これらを解決していくための調査を実施していくこととしました。
 原田順一さん(特定非営利活動法人湘南自然学校)、吉松梓先生(明治大学)、向後佑香先生(筑波技術大学)の3名とプロジェクトを進め、まずは次年度の調査に向けたパイロット調査を実施する事としました。今夏は①効果があるのか、という問いについてアプローチし、まずは保護者に対しての効果測定を実施しました。 調査概要は以下の通りです。
 調査対象:SPS支援事業へ子どもを参加させた保護者
       (一般家庭の保護者を含む)
 分析対象:有効回答数54名(うちSPS事業3名)
 調査内容:子育てレジリエンス尺度(尾野ら作成)
 調査方法:Google Formsより回答
 調査回数:支援事業のキャンプの事前・事後 (※前後2週間)
 分析方法:対応のあるt検定
 (補足)
 「子育てレジリエンス尺度とは」
 ① ペアレンタル・スキル…子育てに柔軟に、楽観的に対応する能力、家事を効率的にこなす能力
 ② ソーシャル・サポート…家族や周囲の人から子育てについての評価や理解、サポートを得る力
 ③ 母としての肯定感…母親としての自分と子どもを肯定的に受け入れること
 の上記3つを測ることのできる尺度。
 【項目内容】
 子どもに対して柔軟に対応することができる(ペアレンタル)
 子育てをするのに腹がすわっている(ペアレンタル)
 子どもに大変なことが起きても楽観的に捉えることができる(ペアレンタル)
 何があってもいつものように家事をこなすことができる(ペアレンタル)
 子どもの悩みを話せる人が家族以外にいる(ソーシャル・サポート)
 子どもに関する情報をくれる人がいる(ソーシャル・サポート)
 家族以外にわが子のことを気にかけてくれる人がいる(ソーシャル・サポート)
 母(父)として頑張っている自分を理解してくれる人がいる(ソーシャル・サポート)
 子どもは私にとってかけがえのない存在だ(母としての肯定感)
 子どもをかわいいと思える(母としての肯定感)
 子どもを授かったことに感謝している(母としての肯定感)
 お母さん・お父さんと呼ばれることがうれしい(母としての肯定感)

 自然体験活動に子どもを参加させた前後でのそれぞれの能力得点の変化を見ると、「ペアレンタル・スキル」、「ソーシャル・サポート」の二つの因子に有意な向上が認められました。つまり、自然体験活動に参加した参加者への効果のみならず、自然体験活動に参加させた保護者にとってもポジティブな影響がある可能性があり、非常に興味深い結果になりました。残念ながら、SPS事業利用者への調査が充分に行えなかったため、一般参加との比較などはできませんでしたが、今後の調査の課題として次年度には改善をしてより確かなものにしていきたいと思います。
※調査や結果の詳細については、今後公開していくまで少々お待ちください。もし詳細についてお聞きしたい場合は、直接お問い合わせください。
徳田連絡先:tokuda@ouhs.ac.jp
 引き続き、頑張っていきますのでどうぞよろしくお願い致します。