日本を、支える人材、けん引する人材、を育てる

Ⅴ 研究提言

「理論×実践」、より良い社会を目指すために必要であるキーワードであると認識しながらも、未だその融合がなされていないように感じています。「社会に役立つ研究」を問い続けながら、「理論×実践」の融合を体現できるよう進めていきます。

日本野外教育学会第27回大会に参加して

2024.7.31

 12th Japan Outdoor Leadership Conferenceに続き、6月29日-30日の1泊2日で日本野外教育学会第27回大会に参加しました。
 学会は、28日(金)より実施されプレエクスカーションとして、
① 森林教育プログラム体験
 内 容 森林教育活動体験、演習林見学、研究交流討議
 講 師 杉浦 克明 氏(日本大学生物資源科学部)、大石 康彦 氏(森林総合研究所)
② 障害者クライミング体験~ブラインドクライマー世界チャンピオンと登ろう~
 内 容 障害者クライミングの体験
 講 師 小林 幸一郎 氏、木本 多美子 氏(NPO 法人モンキーマジック)
③ 御岳ラフティングツアー
 内 容 ラフティングツアー、児童養護施設のラフティング体験に関する事業紹介
 講 師 小田 弘美 氏(NPO 法人奥多摩カヌーセンター)
が実施されました。
 全国各地で実施される学会ですので、学会と合わせて地域ならではの活動ができるのは嬉しいですよね。※私は仕事の関係で参加できず。泣
29日(土)からは、自主企画シンポジウム、基調講演、シンポジウム、研究発表と続きます。
自主企画シンポジウムでは、
① 「野外教育学の探求」をめぐるダイアローグ
② 国際的な野外教育研究動向-IOERC10の発表分析から-
③ 大学教育における野外教育の新たな可能性-アメリカの事例に学ぶ-
④ 青少年教育施設のこれからの役割を考える
⑤ 日本の野外教育の限界:取り残される支援の必要な子どもたち-インクルーシブ野外教育専門人材の育成-
 といったテーマのもと、各会場で2時間程度のシンポジウムが実施されました。
 私は③に参加をしましたが、アメリカでは野外教育プログラムが大学カリキュラムの「初等教育」として位置づけられているような大学もあることや、大学のサービスとしてキャンプやアウトドアスポーツが提供されており、その指導を担うのもトレーニングを受けた学生であるとのことでした。トレーニングの質が高く、基本的な野外生活技術の取得に加え、環境倫理、野外救急などの資格を取得することによってはじめて指導をすることができるとのことでした(この時点で社会に出ても即戦力ですよね)。学生も指導スタッフであることを「ステータス」として認知しており、多くの学生が希望をするそうです。まだまだ自分の大学ではそのような状況にはなく、カリキュラムの側面、大学サービスの側面それぞれに野外活動の可能性を感じる時間となりました。
基調講演には養老孟司氏から「すべての子供たちに自然体験を」というテーマでお話頂き、シンポジウムでは「誰一人取り残さないために、野外教育に何ができるのか」というテーマのもと、吉岡マコ氏(NPO法人シングルマザーズシスターフット)、今井悠介氏(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン)、原田順一氏(みんなのアウトドア)、和田真帆氏(子ども家庭庁)からお話を伺いました。養老氏の本質を突いた語り、各シンポジストの熱い気持ちの伝わるお話には刺激を頂きました。野外活動(教育)の価値向上には高額化していく流れも必要かと思いますが、反対に誰もが教育を享受できるような仕組みづくりは急務であると感じました。
 研究発表も多くのテーマが見られましたが、野外活動の効果測定を主軸に、昨今調査対象の広がりや民間と連携する動きが少しずつ見られるようになってきたように思います。
 実践と研究の融合を目指す上で、研究のための研究に偏らないことを念頭に置きながら、民間の方々とのコミュニケーションが重要であると感じています。もっともっと民間の方々が役に立つ、参加したいと思える学会を目指したいと思いました。