SPS事業研究プロジェクト2023年度報告会を実施しました。
2024.4.30
2024年度もどうぞよろしくお願いします。大阪体育大学は4月2日に入学式が行われ、3日から授業がスタートしています。なかなか早いスタートですよね。この背景には夏期の実技授業(特に屋外)において熱中症等のリスクが高く、少しでも早めに授業期間を終了させるという意図があります。温暖化の影響が実務に出てきて、あらためてこれからどうなっていくのかと不安に思います。自然と関わる我々の業界だからこそ、率先して自然や暮らしとの向き合い方を考えていかなければなりませんね。
さて、4月16日(火)に「2023年度SPS報告会」が実施されました。その中で我々は2023年度夏期調査の結果を報告しました。キャンプ参加者や保護者の自尊感情や子育てレジリエンスについて、保護者や運営事業者へのインタビュー調査の速報結果、様々な内容の報告を行いました。
調査結果はSPS事業をはじめ、キャンプ活動の持つ価値や意義を証明するエビデンスとして意味を持つことが期待されますが、この報告会の中ではある保護者から頂いた手紙についてもJON事務局長の原田さんが読み上げました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
少しずつ日脚が伸びてくる頃となりました。皆様お変わりございませんでしょうか。
この度は素敵な絵本「はじめてのキャンプ」をありがとうございました。子ども2人と一緒に就寝前の読み聞かせで楽しませていただきました。読み聞かせ中の子ども達は「なほちゃん、まだ小さいのに誰にも手伝ってくれないだね」「暗い中一人でトイレに行くの、こわいよ」と主人公のなほちゃんの心情を慮っておりました。しかし、終盤の一皮剥けたなほちゃんの姿に「強くなったね」「勇気を出したんだね」となほちゃんの成長に感動しておりました。特に5歳の娘は何度もページを戻しては、なほちゃんが挑戦するシーンをじっと見つめ、考えを巡らせている様子がありました。
日常生活の中ではついつい「小さいからできなくて当然」「小さい子に合わせてあげよう」とできない前提で助けてあげるといった関わりをしがちですが、あくまでも「自分のことは自分でする。みんなで取り組むことは一人ひとりがもてる力を合わせる」という本質的な部分に気付かされました。
参加させていただいている自然体験教室(Tokyo adventure club)でも「自分のことは自分でする」ことが基本スタンスとしてあり、年齢や体力に合わせてサポートいただくことが多いです。また、参加当日は目一杯活動して帰ってくるので「疲れた~」しか言いませんが、後日活動の話題になると「〇〇をするために〇〇を使った(工夫した)」「大変だったけど、〇〇をしたらできた(完成した)」等、当日の様子を楽しそうに伝えてくれます。話に耳を傾けながら「自分のできることと仲間の力を合わせて、最後までやり遂げた」という経験が、本人たちの自信につながっているのだな…と感じました。
自然体験教室に通わせていただき、2年目となりますが、本人たちの成長とともに「“できる”を作り出す」「自分の気持ちを表現する」「安全かつ全力で楽しむ」といった力が育ってきているように思います。私ごとではありますが、昨年離婚をし、母子家庭になりました。子ども達は環境の変化に戸惑い、感情のコントロールが難しい時期もありましたが、TACスタッフの方々がどんな子ども達の姿も受け入れ、存在を認め、居場所を作ってくださいました。そして、「今できることを精一杯やる」という“たくましさ”を子ども達から学びました。こうした力を培ってくださったTACの方々をはじめ、活動を支援してくださるSPS事業に関わる方には感謝してもしきれません。
経済的な不安もありますが、今後も継続して体験教室に参加できるよう、私も頑張っていこうと思いました。
自然体験活動は“教育の本質”が多く詰まった素晴らしい活動だと思います。これに携わる方々の想いやこどもの成長を願う親の声が、これからも広がっていきますように。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この手紙の内容を聞きながら多くの参加者が胸打たれ、画面越しではありますが、参加者から多くのエネルギーが生まれたことを実感しました。
この出来事からも、物事を推進していくためには、エビデンスベースで社会に発信していくことだけでなく、実際の声を発信すること、の両輪が必要であることを強く感じました。事業運営者や参加者に多くの協力を頂いて動いているプロジェクトとしても、両者に、社会にしっかりと還元できるように、気持ちを新たにする報告会となりました。
今年度も、頑張っていきますので、どうぞよろしくお願い致します。